中国でのちょっと
       第一部

 紀行文とは言えない話であるが何処にあっても好むと好まざるに係わらず必ず出くわすのはこのHな話であろうか。
 私の紀行文のそれぞれの中での話にこれが出てくる事が文の流れであろうが、それでは紀行の話としては逸脱してしまいそうなので敢えてここで一つの項に纏めて紹介する事にする。
 年は取っても私も男、決して女性が嫌いではないしどちらかと言うと好きな方と言えよう、まして私自身家内を病気で亡くして早二十数年なので、他の人から見ると気の毒とみえるのか、それとも物欲しそうにも見えるのか、あまたの紹介や誘われた事も結構有りはしたが、観光ならばいざ知らず仕事が主体の生活では立場とか身辺への影響などを考えるときそう簡単に事は起こせない訳である。
 さて本題に入ろう、現在の中国での恋愛は年ごとに西洋化して来てはいて、若いカップルなど日本の町で見かけるのとさほどの違いは見えないが、根底に残っている前体勢の影響が一般には残っている様に見える、例えば仲間同志でのH話でも我々だとお互い笑いあって話が盛り上がるが、こちらでH話でその場を盛り上げ様とすると、とたんに相手の顔がこわばる気配になり座が白けたような雰囲気になってしまうことが多い。
 話を出した私が他の誰かの悪い事でも言ってしまったのかと一瞬回りを見回すがそうではなく、原因はHな話に有るとわかり戸惑ってしまう。
 これは我々だと普段でもH話などには余り刺激と言うか関心が少なく、それ故に日常話として気軽に口に出てしまうのだが、さてこちらは長い間、社会主義と言う硬い社会組織の風習のなかではその事の表現でも抑圧されていて、それが何時の間にか一つの慣習の様になってしまった結果とも言えよう、しかし抑圧されていた物が一時に開放されたとしても若者は別として中年層以上では依然としてそのような体質になってしまっている。
 かと言って彼らが性の話やもろもろが決して嫌いと言う訳ではなく、逆に日本などより抑圧されていただけにそれに対して殊更に敏感であり、関心が有るが故にちょっとしたH話にでも極端に反応した結果とも言えよう。
 中国のおおらかな性に関しては古い史書などでも知ることは出来るが、現実にでも、この抑圧が既に無くなった地方や場所などでは予想外に多くの事柄に遭遇する機会で出くわすのを見ても彼らの関心度の高さを計り知る事が出来よう。
 今でも都会に於いての性に対する規制は私の体験や伝え聴いた事とさほどの違いは無いがそれも一歩都会を外れるとその氾濫の度合いは想像の外と言えようか。
そこに規制が無い訳ではなく、いわゆる法の裏と言うのか裏取引と言うのか、半ば公然の営業として成り立っている商売さえも多数がある事でも解る。
 一例は洗髪店でそれは髪を洗うだけの店であるが(日本にある様な床屋や美容院は別に有る)希望すると洗髪以外に体のマッサージをしてくれる、しかし中国の規制は厳しくてマッサージで許可されているのは頭、顔、手、足だけで身体の他の部分には触る事が出来ない事になっている、しかしこれらの店では洗髪は型ばかりで客の希望で本番でも手でするだけでも自由にしてくれるのは風呂の無い中国版トルコ風呂と言えようか、これは別としても近頃のちょっとした大きな町に行くと必ずと言うくらいに出来ているサウナ風呂でも大概は有る程度のこの手のサービスはするが、これも公安(警察)との取引や追いかけっこで、もし摘発されると三ヶ月ぐらいの休業とか女性の交代とかで営業は続いている。
 洗髪店は上海の市内等の店では厳密に規則を守っていてそこの特徴と言えば顔のマッサージを丁寧にしてくれる事で、この頃はそこに女性の客でも結構入っているようだ。
 地方ではこの店が十数軒固まり、店頭は豆電球で飾りその一角が特殊な地域になっていたりする、店は小さくせいぜい四五坪程度で洗面台と椅子が数脚ほどでその奥にマッサージのベットが二台程度あり各ベットはカーテンで仕切ってある。
 店にはオーナーの男と女性は多くても二人ほどでほとんどは一人が多く、もし客が四五人だと彼らはフィフティであろうか知人の店に割り当てる、客が二人の時は女性等が仲間を連れて来るなどなかなか効率が良くなっている。
 洗面台に湯沸かし器がついてはいるがどうかするとしばしば機能せず冬でも水のことがあっても、客はそれが目的ではない故かそれには文句も言わないようだ。
 洗髪だけだと三十元程度で最終コースで二百元、その前までだと百元位だから洗うだけだと彼らには商売になりそうもないが、この辺での月給の六七百元から見ると一コースの二百元は相当に高価と言えるから、女性に取っては良い職業なのだろう。
 因みに女性たちの出身地を聴いて見ると殆どが内陸部からの出稼ぎが多く、さすがに近在の者はいないようである。
 現在の一人っ子政策前の子供たちが丁度このくらいの年齢になってきているので、もしも中国がこれらに対して無政策で過ごし性産業を野放しにしたら世界一の男性天国に成りうる事だろうが--残念--。
 私も何も出来ない(男性自身)ながらサウナで挑戦したことがある。彼女は日本人と見た故か三百元と言うが(四千円前後)何とか美人の部類なので我慢する事にする。
 一通りのマッサージが終わり、いざ件の女性がベットで迎えの体勢を取るも当方は老人のこと、猪突猛進するほどの威勢はないので徐に女性の茂みを鑑賞する姿勢になる。
平均に此方の女性には多毛が少ないと言われているのが定説となっていて、中には極端な少毛(乃至無もう)も多いと言うのは経験の少ない私も納得の事ではあるが、目の前にはそれほどでもない茂みの光景が横たわっている。
その薄茶色のブッシュに瞳の焦点を合わせると何やら茂みの間にピンク様の物が点在している、多少近寄ってよくよく観察するとチリ紙のちぎれであることが解る。
まあ、一片の切端ならばうっかりとも思えるが、これほど多数の点在では衛生観念の欠如としか言いようがないし、それは彼女の持ち物自身の普段の管理にも疑問が涌いて来る。
 この瞬時に折角高揚し始めたささやかな老年の意志はあっけなく霧散してしまった。
 その他に、この国道沿いを車で走ると随所に二階屋程の食堂を見る事が出来、その各店頭には頭に大きなリボンを付けたり着飾ったりした女性が、入口に椅子を出して座っているのを見て当初は客の呼び込みかと思っていたの所、その後の知識で本当は走る車の客を待っているのだと言うながわかる、これは客の殆どが運転手などが主となる訳である。
 確かに中国では車の運転手は給料もよく花形の職業であるから、彼らが食事と休憩とに立ち寄ることにより、その後は二階で彼女たちの営業と成るわけである。
だが実際は運転手だけが客ではなく、一般のその道の愛好者のそれを目的としたドライブも相当に盛んで有るらしい。
 二例目、上海の対岸にある宇波での事、昼時、地元の人の案内で川沿いにあり、テーブル二つ位の小さな飯店に入る、他には客もいない店内ではマスターが盛んに話しているが中国語が解らない、しかし解説では女性はいらないか、と聞いていると言う。
 真昼時である、しかしこちらの三人の中の上海からの同伴者が乗り気に成ったので、それでは私が持ってあげるから、念の為と呼んでみることにする。
マスターが出かけて帰ったと思う間もなく、普通にまちを歩いているような若い女性がスーっと店に入って来る。店主曰く、五人位はいるから気に入った女性が次々に来るのでそのなかで良いと思う人がいたら合図をしてくれと言う。
なるほど、店主の説明の如くオーケーサインを出さないと直ぐに帰り、続いて次が現れる、三人目に二十歳位でまずまずの程度の女性を気に入る。
店主もいかほどかの割り前があるらしくこまめに手配してくれ、我々はそれなりに食事を済ませると、彼は出かけ事になる。
 表にでると例の女性が待っていて自分の部屋に連れて行くらしくタクシーに四人で乗り込むと車は町外れの住宅街まで行き止まり、我々二人は彼を残してそのままタクシーでホテルに帰る。
 午睡して目が覚めて見ると彼は帰ってきていて
「どうでしたか?」
「いや、まいったね、事が済んで見ると部屋に風呂がない、おまけに水道とシャワーが外なので洗う事が出来ず、仕方なく自分のパンツで拭いて来たのでノーパンツで帰ってきた」
これには久しぶりの快挙と大笑いであった。
因みに、彼女は彼と一緒に遊んでいたが彼がゲームセンターで夢中になっていて暇なのでその間の仕事だと言う、中国も進んで来ているようだ。


     
第二部

前項で少しは書いてあるがマッサージに付いてもう少し説明しよう。
何にしても、サウナは一般庶民には高嶺の花で金持ちや外国人をターッ
トにしている趣がある。
 本来、中国ではドップリと浴槽に浸かるような入浴は余りしない、風呂は殆どがシャワーだが庶民向きのサウナと言える物は結構彼方此方に数は有るけれど殆どに浴槽は無い。だからプールの様な湯船が有る所は高級なサウナだけと言う事で、その上に風呂の後で体まで洗ってくれるような所は値段が高い、 しかし男性用のサービスは主にこのような所でないと望めない。
ここでは体洗い、耳掃除、爪切り、マッサージとドリンクがつき,望むならば特別奉仕も有るがこれが問題で、規則では女性が客の体に触る事は違反なのに、それ以上のサービスとなると危険を承知の上での行為となるのである  だからこの規制を逃れる為には公安(警察)と通じている事が必要事項だから、彼等がここに来ると特別待遇(ロハ)でサービスされている。だからしばしば一緒のサウナ風呂の中での会話などを聞いていると殆どが役人や公安の者で、これらが極端に多いのに気がつく、まずは役人天国と言えよう。
 これが、ひとたびこれらに睨まれるとしばしば店に公安の手入れをされて女性たちが連行されてしまうので暫く休業とか名義の変更とかしなければならない事になる。
 これとよく似た所がカラオケである。
一般に歌を唄うには町の飯店でもよく、ちょっとした飯店には必ずこの設備が有って食事しながら朝からでも唄っているくらいで、日本よりカラオケが好きらしく食事の度に唄う仲間がいるほどである。
 所謂カラオケ(可拉OK)と言えるものは夜の町の風物といえよう。
このカラオケはキャバレー的要素を多分に持っていて、歌よりも特定な女性を指名して飲んで戯れるのがここでの遊びなのである。
薄暗い店内に入るとそこはちょっと低いホールになっていて、周りの椅子に女性達が座っている。ホールの後ろにカラオケルームが三四室有り、先ずその部屋に案内され、早速女性を物色にホールに下り気にいった女性を指名すると客の部屋に入って来る。
ドリンクは町の店ではほとんどお目に掛かれないウイスキーでもブランデーでも何でも有りだが値段のほどは覚悟しなければオーダーは出来ない 女性達はチップと言うか料金と言うか客との談合での金額でサービスの度合いが違って来ると言うシステムであるがこれは好き者の事で、唄好な者はカラオケボックス風にガナリ続けても良い。
しかし、概ねの者の目的は女性との戯れに有る訳で料金の元を取ろうと頑張る。
 これらの店の多くにはバックに公安や軍隊が付いていたり、又直接経営している店も有ると言い、これを公安が軍隊を、軍隊が他の店をとお互いが密告などをしあって牽制しているような形態は前述のサウナによく似ている。

      第三部中国の恋人達は


中国では国策で晩婚を奨励している関係で日本の様に若くして所帯を持つ人は極めて少ない様である。
現在都会では相当に改善されて来ているが、第一は住いの問題で、部屋が確保出来ないと結婚はしないのが普通なので、恋人達はどこで愛の語らいをするかと言うと、主には公園の暗がり等であるらしいのだ。
夏の夜の外灘の公園などその良い例ではなかったか。街中にはラブホテルはないし、喫茶店もない。大体普通のホテルに宿泊するにも少し以前までは夫婦と言う証明、即ち結婚を証明書出来なければ泊めてもらえなかったようで恋人達には大変不自由な事であった。これも売春を防ぐ為の手段に他ならないのであり、もしも、中国でこの規制を緩めたらどうなるであろうか、多分世界一のこの道の王国になるであろう。
 まあ平均に性に対しておくでと言うか表に出さないのが民族性なのか猥談などをすると顔を背ける事がしばしばあるけれど、聞くところではこの頃はアメリカの真似が流行って来て道路端でキスをしている恋人らしいカップルもしばしば見かける様になって来ているらしいので昔ほどには不自由も無いかもしれないが。
 大体中国では部屋を調達すると言っても、日本の様に荷物だけ運べば住めるというように簡単にはゆかない。
 新しいビルが建ってそれの一部屋を買ったとする。しかしそれは建具も内装も何も無い状態で引き渡されるから、部屋の設計からして工事は自分で手配しなければならない。
まあ、考えようによっては自分の思いどうりに出来るという利点も無いわけではないから、さてどうだろうか。

途中

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