第3回女性作家・演出家シリーズ/HEPホール提携公演

作:樋口 美友喜  演出:池田 祐佳理




 チェーン店の酒場で、会社の帰りの電車の中で、熱気がたちこめる地下鉄のホームで、終電を乗り過ごしてタクシーを待つベンチで、日常で、飲んだくれ達は溢れている。世界など関係なく、関係あるのは自分の半径3メートル以内の範囲のみであり、そんな人々が集まるのはいつだって酒場である。どんなへなちょこだって酒場に行けば英雄になれるのだ。愚痴も、過剰な気持ちも、誰かの悪口も、口々に言葉に吐き出して・・・。

 ここはスモーキー・マウンテンのような発展途上国であり、ただ違うところは、そこはスモーキーではなく、カンパイ・マウンテン と呼ばれる世界。

 仕事がないから女達は男に乗って稼ぎ、男達はその酒の山を飲み干してはコップの底をのぞいて金・銀・銅・鉄が隠れてやしないかと探し出す。それがこの世界での唯一の収入源らしい。

 ここには自分にしか酔えない奴等がたくさんいる。自分に酔いたい人々のことを皆 ジョッキィ と呼んだ。つまり、自分の涙で酔える人々、自分の汗に酔える人々、たまに誰かの体液で酔える人々である。ジョッキィ たちは昨日も、明日も明後日も酔いつづける。

杯を傾け、ハイになる。灰になったら醒めずに一生が終わるのだ。ただそれだけ・・・。


〜いつになったら醒めるのか、コップの底には何が見えるか、分かるまで呑み続けよう〜

戻る   ホーム