作:樋口 美友喜  演出:池田 祐佳理



〜はじめに言葉があった。闇から作り出された光の根源は言葉だった〜

夜明けの街で、その街のデッサンを描いている男<模型屋>が朝ごはんの
サンドウィッチにかじりついたとき、そこには20世紀という音がつまったカセットテ−プが
はさまっていた。このテープをずっと聞けずにいた<模型屋>。
今の時代にカセットテープなんて再生するには、あの時代遅れのカセットデッキが必要なのだ。
そんな時、模型屋の店に時代遅れの女<音々>がやってくる。

<音々>は未だに21世紀に来ることができないでいる。
周りはどんどん進んでいるのに、昭和を引きずっているのだ。
<音々>は今日もまたいつものようにバスに乗り遅れて、パソコンにもついていけず、
コピーも満足に使えず、携帯電話を持ったはいいがどうもうまく操作できない。
そしてとうとう会社にも見放されてしまった・・・ 服装も行動も何もかもが時代遅れなのである。
そんな時、靴の底でくしゃくしゃになった引き換え用紙を見つける。
それは、ずっと前に注文していたある模型の引換券だった。

「忘れてた。もう一度この街で私だけの21世紀のニューイヤーを迎えて
やり直していこうって注文していたんだっけ?」

愛用のカセットデッキをかついで模型屋の店に行く<音々>。
聞けるはずのなかったカセットテープは<模型屋>と<音々>の手で再生されてしまった。
そして、消えたはずの20世紀がもう一度再生され、語り継がれていくのだが・・・


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