私鉄時刻表への招待 第3回

小田急電鉄

 小田急電鉄自身が編集・発行した「小田急時刻表」は、1990年4月20日に創刊されました。それ以前にも「小田急観光沿線」(観光沿線社(現 アルファサービス)発行)や「小田急線標準時刻表」((株)協和企画発行)など、小田急公式ではありませんが時刻表が発売されていました。小田急の時刻表発行の歴史は意外と古いのです。また、このように3種類もの「時刻表」が存在するのも小田急だけです。
 なお、2003年3月ダイヤ改正から「小田急時刻表」は交通新聞社の編集・発行となっています。


1.「小田急時刻表」、小田急電鉄編集・発行、交通新聞社(前:弘済出版社)編集協力
(下線のついている号は、表紙がご覧になれます。クリックしてみて下さい。)

号数 発行年月日 定価 内容など
創刊号 1990-4-20 620円
(税込)
第2号 1990-10-19 620円
(税込)
1990秋冬号 ロマンスカーの時刻がJR時刻表と同様赤色になる(2色刷)
第3号 1991-3-9 620円
(税込)
3月16日ダイヤ改正、新宿〜沼津間特急「あさぎり」運行開始、土休日ダイヤ登場、千代田線と毎日相互直通化(今までは平日のみ)
第4号 1992-3-19 620円
(税込)
3月28日ダイヤ改正、深夜列車増発など
第5号 1993-3-15 720円
(税込)
3月20日ダイヤ改正、急行増発、江ノ島線急行6両化
第6号 1994-3-18 700円
(税込)
3月27日ダイヤ改正、喜多見車両基地使用開始、列車増発など
第7号 1995-2-27 700円
(税込)
3月4日ダイヤ改正、新宿〜秦野間急行10両化
第8号 1996-3-15 700円
(税込)
3月23日ダイヤ改正、EXE登場、「えのしま」号増発&大和停車、特急ロマンスカー停車駅見直しにより「スーパーはこね」号登場
第9号 1997-7-23 780円
(税込)
6月23日ダイヤ改正、喜多見〜和泉多摩川間複々線使用開始、「えのしま」号増発
第10号 1998-8-1 750円
(税込)
8月22日ダイヤ改正、ロマンスカー相模大野・秦野に一部列車停車、駅名改称(六会→六会日大前)
第11号 1999-7-9 750円
(税込)
7月17日ダイヤ改正、特急の運行形態の変更、特急「サポート」・「ホームウェイ」号登場。上り10両編成準急の経堂停車開始(除く平日朝間)
第12号 2000-11-20 740円
(税込)
12月2日ダイヤ改正。千代田線直通列車の大増発、経堂駅の準急停車拡大、湘南台駅の急行停車、多摩線急行・特急の運転開始など。時刻表の数カ所に誤植が発見されたため、11月22日を以て発売中止。
第12号
(再発行版)
2000-12-20
(発売日)
740円
(税込)
上記の再発行版。タイトルの文字部分が赤地に白抜き文字から紺地に白抜き文字にすることで再発行版であることが分かるようになっている。
第13号 2002-3-15
(発売日)
740円
(税込)
3月23日ダイヤ改正。江ノ島線沿線から新宿への「湘南急行」や多摩線沿線から千代田線直通の「多摩急行」の登場および新宿〜新松田間の急行の大部分10両化など。本文では小田原線・江ノ島線が一括掲載されるようになる。交通新聞社編集協力の栄えある第1号

 90年12月に待望の本社発行の時刻表が登場しました。交通新聞社(前:弘済出版社)が編集協力となっており、第2号からは「JR時刻表」と同じく2色刷になりました(特急ロマンスカーが赤色表示)。体裁としては「近鉄時刻表」の流れを汲み、沿線ガイド・停車駅・特急ロマンスカー時刻表などのカラーページを経て平日・土休日の時刻ページと続きます。本文では特急ロマンスカーとその他の種別が同じページに表記されており、また特急ロマンスカーや急行の増解結の様子をそつなくまとめており、わかりやすくなっています。また、千代田線・箱根登山線の全駅全列車の時刻を掲載し、巻末には「各駅ポケット時刻表」を付録として添付するなど、利用者の便宜を図っています。
 なお、第4号までは表紙がロマンスカーの写真でしたが、センスの良さが光っています(表紙写真を参照して下さい)

懐かしの種別・・・「連絡急行」(第2号まで掲載)

 現在では特急としてJR東海と新宿〜沼津間を共同運行している特急「あさぎり」ですが、91年3月より前では「連絡急行」という種別で新宿〜御殿場間の運転でした。これは国鉄〜JRでは「急行」として受け入れていた都合で付けられた種別です(小田急線内では特急と同等)。使用された車両は3000形SE車(SSE車)です。この車両は鉄道友の会から第一回ブルーリボン賞を受けた名車で、乗り入れのため5両編成に改造されました。

停車駅

新宿・町田・本厚木・御殿場線松田・御殿場線山北・御殿場線駿河小山・御殿場線御殿場 (一部御殿場線谷峨停車)

小田急時刻表よもやま話

1.発売元が異なっている!?

小田急時刻表は本社の編集・発行ですが、各駅及び売店で発売されているものと一般書店で発売されているのとではちょっと違うのです。その答えは裏表紙に隠されています。裏表紙に「メディアパル」と書かれ、下部にバーコードがつけられているのは書店発売分です。各駅・売店で発売されているものは裏表紙には時刻表名・通巻・発行所(小田急電鉄)定価が表記されており、「メディアパル」の文字は入っていません。これは、書店発売分はメディアパルに発売を委託しているためと考えられます。ですので書店発売分は雑誌扱いとなっているため「JR時刻表」等と同じようにバーコードがつけられているのです。



2.「小田急時刻表」、(株)交通新聞社編集・発行
(下線のついている号をクリックすると、表紙がご覧になれます)

号数 発行年月日 定価 内容など
2003年ダイヤ改正号 2003-3-20
(発売日)
650円
(税込)
3月29日ダイヤ改正。新宿〜新松田間急行の10両運転の増強や各停の編成増強、湘南急行・多摩急行の増発、多摩線急行の栗平停車(多摩急行は以前より停車)、唐木田行き「ホームウェイ」の増発など。

 2003年ダイヤ改正号から、小田急電鉄が編集・発行から撤退してしまいました。その代わり、創刊号より編集協力を行っていた交通新聞社から編集・発行されました。今までホームページでも告知されていた時刻表発売のニュースリリースがないこと、また駅などに掲示されている時刻表のポスターにも「交通新聞社」の文字が明記されていることから、小田急電鉄自身は監修も行っていない様子です。
 内容的にも、カラーページが大幅に削減され、特集ページもなくなっています。本文でも、営団千代田線の時刻表の掲載が取り止めとなり、他社線も接続駅の発車時刻表のみとなりました。さらに、箱根・伊豆のバス時刻、小田急線内各駅を発着するバスの時刻表の掲載もなくなり、巻末にあった各駅発の電車発車標準時刻表もなくなりました。
 総合的に見ると、小田急の編集時代に比べ必要最小限の部分に的を絞ったといった感じです。次回のダイヤ改正時にはどのような形態での発行になるのかが大いに注目されるところです。


3.「小田急線標準時刻表・全線全駅一覧式」、(株)協和企画発行
(発行年月日の部分をクリックすると、表紙がご覧になれます)

発行年月日 定価 内容など
1983-10-14 380円 ロマンスカーとその他の列車は別々に掲載、追い越し・追い抜き表示
1985-9-20 380円 首都圏私鉄時刻表シリーズNo'1、横浜線時刻表付き

 駅で配られているポケット時刻表を手がけていた協和企画が発行した時刻表です。この時刻表の特徴は「追い越し・追い抜き」式を採用したことです。すなわち、どの駅の時刻を見ても時刻順に並んでいることになり、追い抜きや追い越しにより列車の順番が前後するといったことが無くなった反面、追い抜きや追い越しがある場合順番が変わるため、列車の時刻を追うのに一苦労するといった欠点もありました。また、特急ロマンスカーと急行・準急・各停は別ページに記載されており、特急への乗り換えを調べる場合も不便でした。
 83年発行の時刻表は定期発行にはなりませんでしたが、約2年後には「首都圏私鉄時刻表シリーズ」の第1号として発行されましたが、これも長続きしませんでした。この号を最後に、協和企画発行の小田急線の時刻表は発行されていません。


4.「小田急観光沿線 時刻表付沿線ガイド」、(有)観光沿線社・(株)アルファサービス発行

 一番古くから発行されていた時刻表であり、各駅売店などで販売されていますが、現在小田急本社が時刻表を発行しているところをみると、発行元は小田急の関連会社ではないようです。この時刻表の体裁は非常に特徴的で、特急ロマンスカー・急行・準急と種別ごとに掲載されており、掲載の仕方も縦に見るか横に見るかまちまちです。この方式ですと急行だけとか乗り換えを考慮しない場合なら使えますが、乗り換えなどを考えると非常に使いづらいです。しかし、年4回発行であることと、本社発行の時刻表に比べ安いことから、固定客も多いのではないでしょうか?
 私の場合、小田急は本社発行の「小田急時刻表」のみが購入の対象ですので、「観光沿線」は機会がある場合のみしか購入していません。よって、現在私が持っているのは以下の3冊です。(クリックすると、表紙がご覧になれます)


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参考文献:「小田急時刻表」・「小田急線標準時刻表 全線全駅一覧式」・「小田急観光沿線」各号、三宅俊彦著「時刻表百年のあゆみ」成山堂書店

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