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尿管結石に対する鍼灸治療
今田開久、清野充典(東京 清野鍼灸整骨院)
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【目的】尿管結石は発作性に起こる腰背部痛や側腹部、下腹部から会陰部に放散する痛みを起こし、時として激しい疼痛や血尿を伴う疾患です。尿管結石に対する鍼灸治療についての報告は過去にも見うけられますが、その数は決して多くありません。しかし、尿管結石は腰背部痛を主訴として鍼灸院を受診することも少なくない疾患です。我々は、他医療機関において尿管結石と診断された患者に対し鍼灸治療を行い、排石の促進と疼痛の緩和に鍼灸治療が有効と思われる結果を得たので報告します。
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【対象】対象は他医療機関において尿管結石と診断され、結石の直径が5mm以下の患者(男性 30・52・52・60 30〜60歳 平均年齢49歳)4名と、他医療機関にて体外衝撃波結石破砕術を受けた患者で、結石破砕後も腰部や腹部の症状が継続したため来院された患者(男性1名 52歳 女性1名 38歳)2名、合計6名です。
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【方法】治療は結石の存在する側の水道穴付近の圧痛部に対し、ステンレス製50mm20号鍼以上を用い、内下方に向かって30〜40mm程度刺入しました。刺入深度は患者が鍼の響きを感じることを目安とし、その後、灸頭鍼療法を行いました。壮数は3壮を基準とし、皮膚の発赤を目安としました。
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写真は、水道穴の位置を示したものです。水道穴の位置については諸説ありますが、私達は大巨穴の下2寸の説をとり、その付近の圧痛部としました。
大巨の下1寸 経穴彙解、中国、柳谷素霊
大巨の下2寸 註証発微、鍼灸聚英、経穴纂要、十四経和語鈔
大巨の下3寸 鍼灸甲乙経、千金方、素問次註、外台秘要、十四経発揮、類経、東医宝鑑
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写真は、灸頭鍼をしているところです。線香で下から3・4箇所着火し均等に燃え上がるようにしています。
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【結果】直径5mm以下の症例においては、1〜3回の鍼灸治療後に腰部や腹部の症状の緩解が得られ、排出が確認されました。それ以上の大きさで、体外衝撃波結石破砕術を受けた症例でも、4〜5回の鍼灸施術にて症状が緩解し、医療機関での検査にて排石が確認されました。
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【考察】尿管結石は直径5mm以下の場合では自然排出されると言われているが、排石には数ヶ月を要する場合もあり、鎮痛薬を必要とすることが多い疾患です。また、結石破砕術後も同様に疼痛を伴い、排石までに時間を要することがあると言われています。
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尿管結石は、結石の存在する側の水道穴付近に強い圧痛を認めることが多く、我々は今回の症例以前に、圧痛部位に細い鍼での刺鍼、浅刺、置針術などの方法も試みましたが、思った効果は得られませんでした。
試行錯誤したのち、鍼の響き感が得られる程度の深刺で灸頭鍼療法を行う方法を選択したところ、このたびの発表につながる有効と思われる結果を得ました。
これは腹膜への刺激が、なんらかの形で尿管を弛緩させ、排石を促進する効果があったのではないかと考えます。
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【結語】今回、尿管結石に対して水道穴に灸頭鍼療法を行うことにより排石促進と疼痛の緩和を得ることができたと考えます。鍼灸治療では、鍼の太さ・刺入の深さやその後の鍼の操作(単刺術・置鍼術・雀啄術・鍼通電・灸頭鍼を行うなど)、手技の選択により治療効果に差があるのではないかと考えます。今後、様々な病態について、鍼灸手技の検討が成される事を期待いたします。
今回報告した、尿管結石の症例に対して、水道穴に灸頭鍼療法の治療方法が、多くの先生に追試されることと、科学的に解明されることを期待します。