| 7・悲しそうな顔 | |||||||
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俺は今、とっても困惑していた。 先日、俺はつい勢いでタケルさんと付き合うと言ってしまったんだ。 勢い。そう勢いだった。 タケルさんの事はもちろん好きだが、でも恋人にしたいとかそこまでの想いではなかった。 なのに俺はつい付き合うと言ってしまった。 「今更、取り消したいなんてなしだよな?」 俺は自分の家の部屋で呟いた。 ベッドの上にごろんと寝転がり、タケルさんの事を考える。 やさしくて真面目で格好良いタケルさん。 それに正義の味方だ。憧れのヒーロー様だ! 「好きになるしかないよな・・・・」 悩まない位に、彼に夢中になってしまえば良い。 付き合うと決まって身構えてしまったが、付き合えばどうにかなるのかもしれない。 俺は自分の考えを前向きなものに変えた。 変えようと努力した。 「どうせシューヤなんか愛人がいるんだし・・・」 そう呟いた瞬間、胸が痛んだ。 「違う違う、俺はシューヤなんか何とも思ってないんだよ!」 俺はベッドで毛布をギュっと抱きしめた。 もう付き合うと言ってしまったんだ。 付き合うしかないじゃないか。それに元々憧れていたんだから。 「俺はタケルさんを好きになる、いや、好きだ、大好きだ」 俺は自分に言い聞かせるように呟いていた。 春のやわらかな日差しの中、俺はせせらぎ湾岸公園で待ち合わせをしていた。 海の見える芝生の公園のオブジェの前で、俺は名前を呼ばれた。 「ルイ」 タケルさんは俺が振り向くとさわやかに微笑んだ。 その笑みにドキンと胸が鳴る。 「今日は君とデートができて、本当にすごく嬉しいよ」 そう言うタケルさんに俺は苦笑する。 「別に初めてのデートじゃないじゃないですか」 「いや、付き合いだしてからは初めてだからね、だから以前とはちょっと違う気持ちなんだよ」 俺はその言葉にタケルさんを見上げる。 「今、君は俺の恋人だからね」 ドキン。 心臓が激しくなる。 恋人なんて改めて言われると、なんだか胸の奥がむずむずしてしまう。 休日の湾岸公園はおだやかだった。小さな子供連れの家族や、カップルが至る所にいる。 俺はふと隣を歩くタケルさんを見上げた。 タケルさんはすれ違うどんな男よりも凛々しくて格好良かった。 なんだかもう、クラクラする位格好いい。これが正義の味方様のパワーだろうか。 まあ、私服だろうがなんだろうが、いついかなる時も赤いジャケットとかシャツとかを着てるのはどうかと思うけど でも公務員だし、規則でもあるのかもしれない。 赤い服を着ないとせせらぎレッドを解任されてしまうとか。 でもその赤い服がおしゃれに見えなくもない所が、タケルさんのすごい所だ。 「あ」 ふいにタケルさんが前方を見ながら声をあげた。 俺は妄想に夢中で気付いていなかったが、見ると前方で小さな子供が転んでいた。 タケルさんはしゃがみ込むと少年に声をかける。 「大丈夫かい?」 「う・・・うん・・・」 その言葉にタケルさんは微笑む。 「うん、君は強い男の子だね」 言われた少年は照れながらも嬉しそうな顔をしていた。 俺はそんな光景に感心してしまっていた。 正義の味方らしいといえばらしいけど、これが素なんだとしたらタケルさんて本当にすごい良い人だ。 正義の味方の標本になったら良いんじゃないかって思う。 タケルさんは少年に手を振って別れた後で、俺の隣まで戻ると笑いかけてくれた。 その笑みに俺はちょっとドキっとしてしまう。 「タケルさんて本当に格好良いですよね。なんか理想的な正義の味方って気がします。 生まれた瞬間から正義のヒーローだったんじゃないですか?悪い事とか今まで 一回もした事がないような、そんな超人的な良い人ですよね。もう完璧で格好良い人って感じです」 俺の言葉にタケルさんは苦笑して頭をかいた。 「それはちょっと褒めすぎだよ。俺はただの普通の人間だよ。それにそれなりに悪い事をしたり イケナイ事だって考えたりするんだから」 「え、タケルさんが?」 驚く俺にタケルさんは言う。 「実は飲酒は小学校生の時にしたんだ。甘酒とか飲んでね」 「えっと、それは飲酒に入れなくても良いと思いますが・・・」 「それにタバコもね、実は小学校で口にしたんだ。チョコかと思ったらタバコでさ」 「えっと、それもカウントしないで良いと思います」 「そうだ、泥棒だってした事があるんだよ。友達に借りたCDをまだ返してない」 「えっと借りパクはよくある事っていうか、そのうち返せばオッケーなんじゃないですか?」 「それに」 言うとタケルさんは俺の腕を掴んだ。 「え?」 驚く俺を引っ張って、タケルさんは芝生の中を歩く。 そして公園にあった木の陰に俺を連れ込むと、俺の体を木に押し付けた。 「タケルさん?」 俺はタケルさんの行動に驚いて目を見開く。そんな俺の顔をタケルさんが覗きこんでくる。 そして真剣な瞳で俺を見下ろして言う。 「それに俺は君に対して、すごくふしだらで淫らな事がしたいって考えてしまってるんだ」 その言葉に俺の胸がドキドキとした。 「あ、あのタケルさん・・・」 何か言わないといけない。でも何も浮ばない。そんな俺をじっと見ていたタケルさんの顔が近付いてくる。 「ん・・・」 タケルさんにキスされた。 俺の胸はドキドキとしていた。今までシューヤとは何度もしたけれどタケルさんとキスしたのは初めてだ。 そのシューヤとは違う唇の感触に俺は眩暈がしそうだった。 数秒触れたあとで唇が離れる。そっと目を開けるとタケルさんと目が合う。 「嫌じゃなかった?」 「え、あ、はい・・・」 俺は熱くなった顔で条件反射的に答えていた。するとタケルさんは嬉しそうに微笑んで俺の頬に触れた。 「ね、もう一回してもいい?」 「ええ?!」 そんな事聞いちゃうんですか?!それに俺は答えないといけないんですか?! 困惑して言葉が出てこない俺に、タケルさんは唇を寄せた。 「あ・・・」 またキスされた。 けれど今度のキスは先程のキスとは違った。 口の中にタケルさんの舌が入ってきて、俺の口の中を動きまくる。 「ん、あ・・・」 舌をからめられて、なんだか体の力が抜けてく。 ふと気付くとタケルさんの片手は俺の体を支えて、もう片方は俺の体に触れていた。 タケルさんの手が俺の腰を撫でている。そしてその手が更に俺の股間の方に移動していく。 「あ・・・」 さっきよりも更に胸が激しくドキドキした。 ど、どうしよう?!タケルさん正義の味方なのにすっげー手が早いよ?! 俺は反射的にタケルさんの体を押した。 すると股間に伸ばされた手が引かれた。 「はあ・・・」 唇を開放されて大きく息をつく。つい唇についた唾液を指で拭ってしまう。 タケルさんはそんな俺を見ながら、再び俺の腰を掴んだ。 「た、タケルさん?」 「もうちょっと触れたらダメかな?」 「え、えっと・・・」 俺はどう答えて良いのか分からない。目を彷徨わせるとタケルさんが言う。 「今まで、君にシューヤが触れているのを見て、本当はすごく辛かったんだ。 嫉妬で狂いそうだった。でも君は俺のモノじゃなかったから、何も文句は言えなかった。 ただ正論だけで君をあいつから引き離そうとしていた。でも今は君は俺の物になった。 だからその・・・」 タケルさんは俺の肩をギュっと掴んで、そして言った。 「あいつよりも君と深い関係になりたい」 その言葉に俺は衝撃を受けていた。 ふ、深い関係ですか? 顔が急激に熱くなっていく。 「あ、タケルさん、その、俺、あの・・・・」 しどろもどろの俺の腕をタケルさんが掴んだ。そしてその手を木に押し付けて、顔を寄せて言う。 「そんなに心配しないで。いきなりすごいやらしい事をするわけじゃないよ。 ただ抱き合って、触れ合いたいだけなんだ」 なんだ、そんな事かとつい思ってしまった。 だって今の感じじゃ、いきなり本番とかフェ○とかまでされちゃうのかと思ったからだ。 だから俺はつい安心して言ってしまった。 「そんなんならぜんぜん良いですよ」 「ルイ」 彼は俺の事を抱きしめた。そしてまたキスをすると俺の体を抱きながら手を這わせる。 その手は俺の腰から胸、それにうなじにまで触れた。 「ん・・・」 ついなんかヤバイ声が出てしまう。 というか俺はつい安心して「良い」なんて言ってしまったが、これはぜんぜんたいした事じゃない。 服を着たままだけど、肌に手が触れるわけだし、あろう事か感じまくってしまう。 「タ、タケルさん・・」 抗議しようかと思ったらまた唇を塞がれた。 「ん」 かなり無理やりな感じだった。また舌が口の中に入ってきて頭の中が痺れてしまう。 それにタケルさんの指が服の上からだけど俺のモノを弄ぶ。 形をなぞられて、指で刺激されてたまらない。 「あぁ」 唾液が唇の端から零れ落ちそうだ。こんなの直接触らなくても本番じゃなくてもすっごくやらしい。 やらしすぎる。こんなの困っちゃうよ・・・! 「あ、タケルさん・・・」 俺の口から出る言葉が甘い喘ぎなのか、抗議の言葉なのか分からない。 「あ・・・」 なんかこのまま服を着たままイかされてしまいそうだ。 そう思った時だった。 ビシュ!! 俺の耳のすぐ脇、寄りかかっていた木にいきなり大きな穴が開いた。 その光景に先程まで熱かった俺の体が一気に冷えた。 だって目の前にムチを構えたシューヤが立っている。 そう、この木に大きな穴を開けたのはシューヤのムチだった。 そしてシューヤは今までに見た事もない怒りの形相を浮かべていた。 顔の模様も先日よりも強く濃く浮かび上がっている。 俺はそんなシューヤの様子に、足がガクガクと震えた。 シューヤの目がとても怖かった。いつもの軽口がきけるような、そんな雰囲気ではない。 シューヤは殺人鬼のような冷たい目で、一歩一歩俺達に近付いてくる。 俺は震えたまま、身動き一つできない。 そんな俺の前にタケルさんは庇うように立った。 「やあ、シューヤまた暴れる気か?困るな、せっかくのデートを邪魔してもらっちゃ」 挑発的とも取れる言い方で、タケルさんは言った。 その言葉にシューヤは目を吊り上げる。 「俺のルイにさわるな!!」 タケルさんは余裕の態度で笑みさえ浮かべて言った。 「君のルイじゃない。ルイは俺の物だ。俺達は恋人同士なんだからな」 俺は呆然としたままシューヤの顔を見ていた。 シューヤは驚きながら俺の顔をじっと見つめた。タケルさんの存在などないように俺の事だけを。 おそらく俺の否定の言葉をまっているんだ。 けれど、けれど・・・・。 それは事実だから・・・・・・・・・。 何も言わない俺の顔を見て、シューヤの表情が変わった。 そう、それはとても悲しそうな顔に、俺には見えたのだった・・・・・・・・・・・・・・。 |
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