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みんなが寝静まった夜。 僕はこっそりと部屋を抜け出す。暗い夜道を微かな明かりを頼りに僕は歩く。 秋になり夜は少し冷え込むようになった。 僕は薄いカーディガンを羽織ながらセンセイの元へと向かった。 センセイは隣の教員棟の2階の部屋にいる。僕は早足でそこに向かった。 「センセイ!」 僕は彼の顔を見るなり抱きついた。 するとセンセイはやさしく僕を抱きしめてくれる。 「ずいぶん冷えてるね。寒かった?」 そう聞くセンセイに僕は首を振る。 「大丈夫。それにセンセイがこうして抱きしめてくれればあったかいし・・・」 そう言うとセンセイは僕をギュっと更に強く抱きしめてくれる。 「手も冷えたね・・・」 言いながらセンセイは僕の手を、自分の両手で挟んでこすって暖めてくれる。 僕は恥ずかしいような照れくさいような気持になる。 やさしいセンセイ。僕は愛されているんだとすごく実感が出来る。 僕はセンセイのベッドに横になるとセンセイの体をギュっと抱きしめる。 何度も触れた先生の唇が僕の唇に重なる。 そしてその唇がやさしく僕の首筋や胸に移動する。 「あ・・・・・・・・・」 僕はその感覚に声を出す。もう馴染んだセンセイの愛撫。 でも僕はそれを少し物足りなく感じる。本当はもっと乱暴に扱ってくれても良いのに。 やさしく僕の中をほぐすセンセイに僕は勇気を出して言う。 「もっと・・・もっと、乱暴でも良いよ・・・・・」 キレギレに僕が言うとセンセイは僕の顔を伺うように見つめる。 僕の中をかきまぜるセンセイの指が1本から2本に増えた事に僕は気づいた。 「あ・・・・・・ん・・・・気持いいよ・・・センセイ好き・・・大好きだよ・・・・・」 「レイン・・・」 センセイがかすれた声で僕を呼ぶ。僕はそれに答える。 「うん、センセイ、好き・・・もっとちょうだい・・・・・」 その言葉でセンセイは自分自身を僕の中にいれる。 「あ・・・・・・・・・」 僕は夢中でセンセイの名前を呼んだ。 センセイがそれに応えるように腰を動かす。 「好き、好き好き、センセイ・・・・・カズヤさん・・・・・・・・・・」 僕は初めてセンセイの事を名前で呼んでみた。 するとセンセイの物が僕の中で大きくなった気がした。 「あ、カズヤさん・・・・・・・好き・・・」 センセイが僕の手を握りしめる。 「僕も好きだよ・・・レイン・・・・・」 「あ・・・センセイ・・・・・・」 センセイが腰を激しく使う。僕の身体が打ち付けられて跳ねる。 「カズヤさん、好き・・・・・」 「ああ、僕もだよ、僕も愛してる・・・ナツキ・・・・・・・・・・・・・・・・・」 センセイが僕の中で達した。 けれど僕の心臓はその瞬間には潰れたように痛くなっていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 センセイは僕の中から出ると後始末をする。 そして僕の顔を覗き込んでやさしく聞く。 「どうしたのナツキ・・・・痛かった・・・?」 僕は涙を堪えながらセンセイを見つめる。センセイは心配そうに僕を見つめている。 それは慈しむようなやさしい瞳で・・・・。 そんなセンセイを見て僕の涙が零れ落ちる。 「ど、どうしたの、ナツキ?」 センセイはまだ自分の失言に気づかない。 そしてそっと僕の涙を指でやさしく拭う。 「ナツキ・・・・・・・?」 僕はその言葉にセンセイを強く見つめる。 そしてギュっとシーツを握り締めながら言う。 「僕はナツキちゃんじゃないよ!僕はレインだ・・・・・・!」 その言葉にセンセイの表情が凍った。 見る間にセンセイの身体が小刻みに震えだした。 「僕は・・・・ごめん・・・レイン・・・・・・・・・」 センセイは口を手で押さえて震えている。 僕はそんなセンセイを黙って見ている。涙は止まらない。 「センセイは今もナツキちゃんの事が好きなんだね・・・・」 センセイは俯いて首を左右に振る。 「違う。僕は君が好きなんだ・・・・・・レイン、信じて・・・・・・・・」 僕は黙っている。 僕は顔を伏せたままのセンセイを見ながら言った。 「だって、名前を呼んだでしょう?それってつまり今もナツキちゃんの事が好きだからでしょう? 僕は身代わりで、センセイの心の中にはナツキがちゃんが今もいるんじゃないの?!」 その言葉にセンセイは顔をあげた。 「違うんだ・・・・本当に僕は君のことが好きなんだ。レイン、君の事だけを愛してる・・・・・・・・」 センセイは僕の腕を掴んだ。その手がやはり震えている。 僕はそんなセンセイから目をそらすと、パジャマを手にとって着る。 「レイン・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 僕はセンセイの顔を見ないようにと目を閉じる。 苦しくて苦しくてどうして良いか判らなかった。 僕はセンセイの事が好きなんだ。 ナツキと間違えて名前を呼ばれても、それでも僕の心は変わらない。 僕は勇気を出してセンセイを見ると、強い口調で言った。 「僕はセンセイの事が好きだよ。大好きだ!ナツキなんて女の子よりずっとずっと センセイの事が好きな自信がある!僕は・・・僕は!」 僕は手にしていたカーディガンを握りしめて言う。 「僕はセンセイの事が好きなんだ!ナツキなんて女なんか僕は大嫌いだ! そんな女がいなければセンセイも僕もこんなに傷つかなくてすんだのに!」 僕はままならない想いをナツキという存在にぶつけていた。 「ナツキなんて大嫌いだ!死んじゃえばいい!」 叫んだ僕にセンセイは呆然としていた。 僕だって自分で自分にビックリしている。何で僕はこんなに感情的になっているのだろう? ああ、そういう性格だからこの施設に居るのか。 僕は絶望感に包まれながらヘンに落ち着いてそう考えた。 センセイは暫く呆然としていたがやがて僕の手をギュっと握った。 「レイン、お願いだから、ナツキの事は悪く言わないで。君にそんな風に言われると すごくつらいんだ・・・・・・・・」 その言葉に僕は思う。 ああ、そうか、そうなんだ。やっぱりセンセイは僕よりもナツキの事が好きなんだ・・・・・・・。 僕はただじっとセンセイの美しい顔を見つめる。 「センセイは僕よりナツキの事が好きなんだね」 その言葉にセンセイは首を振る。 「違う、違うんだ。そう言う話じゃないんだ・・・・・・・・」 僕はセンセイを睨んで言う。 「センセイが大事にしてるナツキが嫌いだ。僕にはセンセイしかいないのにセンセイには ナツキも居る。そんなの僕はイヤだ・・・・・・・・」 僕は何を言っているんだろう? なんて我侭。なんて目茶苦茶。でもこれが僕の本当の気持。 「・・・僕にはセンセイしかいないのに・・・・・・・・・・」 センセイが僕の肩を掴んで言う。 「僕にもレインしかいないんだよ・・・・・・・・・」 「嘘だ。センセイには過去もある。僕には過去もないんだよ?」 その言葉にセンセイはビクリと大きく震えた。 「レイン・・・・・・・」 僕は反射的にベッドから飛び降りると窓へ向かおうとした。 僕は感情的になって、反射的に窓から飛び降りようとしていた。 するとセンセイが僕を後ろから強く抱きしめる。 「待ってレイン!お願いだから早まらないで・・・・・・・君に本当の事を言うから・・・・・・・」 「・・・・・・・本当の・・・こと?」 僕は後ろから聞こえるセンセイの言葉に耳を傾ける。 「ナツキというのは君のことだよ。レイン」 僕は言われた言葉がわからなくて後ろを振り向く。 すると悲しい顔をした美しいセンセイの瞳が見える。 「レイン。君の本当の名前は夏輝だ。君は僕が教えていた生徒だったんだ」 僕はワケが判らず頭を押さえた。 「僕がナツキ・・・?だって、相手は生徒だったって。センセイは女子高の教師だったって言ってたのに・・・・」 「ああ、そうだよ。僕はずっと女子高の教師だった。けど頼まれて知人の家の息子さんの 家庭教師もしていた。それが君だった。僕達はそこで恋に落ちたんだ」 僕の頭の中にふいに映像が浮んだ。 ピアノ。暖炉。バイオリン。両親。生意気そうな鏡に映った自分の姿。 「あ・・・・・・・・・」 僕はダメだと思った。これ以上思い出してはいけない。 「夏輝。君は僕の学校の生徒に嫉妬して精神を病んだ。だから僕は君のために顔を焼いたんだ」 その言葉に僕は思い出す。 暖炉。炎。悲鳴。 「君はでも僕のこの顔を見てショックを受けた。何故なら君は僕の顔を・・・・・ 顔だけを愛していたから・・・・・・・・・・」 「違う・・・・・・・・・・」 僕は頭を押さえて言う。 「君は醜くなった僕を受け入れてはくれなかった。そして自分で僕との一切を封印したんだ。 忌まわしい過去として。だから君の記憶はないんだよ・・・・・・」 「嘘だよ・・・・・・・・違う・・・・・違う・・・・・・・」 僕はうわ言のように繰り返す。 「でも僕はそれでも君の事が好きだった。だから僕はこの施設に教師として一緒に入った。 君が忘れてしまったのを良いことに、僕は再び君の前に立ったんだ・・・・・。 本当にただ傍にいられるだけで幸せだとそう思っていたんだ。だから君に告白されて僕は驚いた。 本当に君がこんな顔の僕の事を好きになってくれるなんて思わなかったんだ・・・・・・・・・」 「違う・・・違う・・・違う・・・・・」 僕の両腕をセンセイがそっと掴む。 「本当のことだよ。例え君がこの顔の僕を愛せなくても、 夏輝、僕は過去も今も君だけを愛してるんだよ」 センセイはヤケド跡の残る顔で真っ直ぐに僕を見つめて言った。 僕はその言葉にほとんどの事を思い出していた。 先生とすごした日々。抱き合った日々。やさしいキス。 けれど、先生の顔だけは思い出せない。 僕はそう、自分で自分の記憶に封印をしたんだ。 「・・・・違う・・・・・ちがうんだよ・・・・センセイ・・・・・・・」 僕は涙を堪えながら言う。 「僕は確かに先生の顔が好きだった。顔も含めた全部が好きだった。 だから僕は僕のせいで顔にヤケドを負った先生が耐えられなかった。 僕は確かにキレイな顔が好きだった。確かに醜くなった顔と昔の顔を比べて 以前のようには愛せないと思った・・・・・・・でも違うんだ・・・・・・・・・・・・」 僕は何故自分の過去を封印したのか? それは再び先生に恋をするためだった。 僕は自分の記憶の中にある、以前の先生の顔を封印した。 そして僕は出会いからやり直したんだ。 再度、先生に恋をするために。 何故、僕に記憶がないのか? それはそう、先生にもう一度恋をするため。 「僕は先生のことが好きなんだ。先生以外を好きになりたくないんだ。 だから僕は再度、出会いからやり直したかったんだ・・・・・・・・・・・」 「夏輝・・・・・」 先生は僕を昔の名前で呼ぶと僕の身体をそっと抱きしめた。 「レインでいいよ。センセイ・・・・・・・・・」 僕はセンセイを抱きしめ返す。 「僕は記憶のないレインだ。昔の先生を知らない、今のセンセイしか知らないレインだよ」 僕は抱きしめられながらセンセイの暖かい涙を感じた。 その昔、夏輝だった僕。 僕はちっぽけな心しかなかったから、先生の醜くなった顔を愛せなかった。 でも本当に先生の事が好きだった。 だからまっさらな気持で再度恋がしたかったんだ。 そして、先生の顔以外の出来事を、すべて思い出してしまった僕は再び記憶を封印しようと思う。 先生の昔の顔を思い出す前に、全部を。 僕が何故この施設にいるのか? それはここに催眠療法を行うカウンセラーが居るからだ。 僕は記憶を取り戻すためにここに居るんじゃない。 僕は知人のカウンセラーに依頼し、記憶を封印するためにここに居たんだ。 僕は明日また、カウンセラーに依頼して強く記憶を封印する。 僕の強い意志で、昔の先生の顔は永遠に封印される。 再度封印。そして僕は再度恋をする。センセイに。 僕はいろとりどりの薔薇の咲く中をセンセイと歩いていた。 薔薇園の薔薇は今が見ごろだった。 美しい薔薇に囲まれて美しいセンセイが微笑んで言う。 「秋薔薇が満開でキレイだね」 薔薇は5月と10月と年に二度咲く。僕は美しいセンセイを見ながら言う。 「薔薇もキレイだけど、センセイの方がもっともっとキレイだよ」 その言葉にセンセイは苦笑する。 「僕はこんな顔なのに?」 センセイはヤケド跡を気にするように言う。 僕は背伸びをするとセンセイのヤケド跡にそっとキスをする。 「僕は今のままのセンセイが好きだよ。今のセンセイよりキレイな人を見たことがないもん!」 その言葉にセンセイは何故か一瞬切なそうな顔をした。 けれどすぐにキレイな笑顔で言う。 「ありがとうレイン。僕も君の事が大好きだよ」 僕達は見詰め合って微笑んだ。 幸せだと僕は実感していた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 SAIDO 封印 SAIDO 恋愛 SAIDO・・・・・・。 |
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おわり 2006.1.23 RIYO 書きたかったのは真実の愛。 もしも恋人の顔に傷が出来たら? 貴方だったらどうしますか? 私はいつもいろんな形の愛を探しては書いている気がします。 このお話が少しでも気に入って頂けたら幸いです。 |
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