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「あの・・・俺・・・その・・・付き合えないから・・・・・・・・」 そう言う春樹に律は微笑む。 「本当は恋人居ないんだろう?だったら俺と付き合おうよ。な、良いだろう?」 律は言いながら春樹の肩に腕を廻した。 その行為に航貴が切れそうになったその時、春樹は叫んだ。 「俺、本当に恋人が居るんだよ!!」 その言葉に律は微笑んだ。春樹が本当の恋人の名前を口にする、そう思った。 そして予想した人物の顔が頭に浮かんだ。 その時。 「俺が好きなのはタムラだよ!!俺、あいつの事が好きなんだ!!あいつと付き合ってんだよ!!」 その言葉に律は黙り込んだ。 暫しの沈黙が辺りを包む。 春樹、航貴、鷹也、律、全員が黙り込んでいた。 そして暫くの間のあと律が口を開く。 「だからさーー春樹ちゃん、もう嘘はやめよーぜ?」 その言葉に律以外の三人はあっけにとられた。 (ええ?!本当の事言ってんのに何だよ?) 春樹は心の中で思った。 律は春樹に向かって言った。 「本当言うとさーー俺、知ってんだよ」 その言葉に春樹は律を見つめる。春樹は律が何を言い出すのかまるで判らなかった。 呆然とする春樹の顔を律は一指し指で軽く持ち上げると言った。 「ねえ、イヴちゃん。もう本当の事言おうよ」 その言葉に全員が気づいた。律がイヴの正体を知っているという事に。 動揺した春樹に気を良くして律は言った。 「春樹ちゃんの恋人ってさ、澤口嵐だろう?」 その言葉に春樹は固まった。 嵐・・・・嵐・・・嵐さん? 考えている春樹に律は語った。 「俺、あのプロモでイヴちゃん見た時にこれは運命の恋だと思ったんだよ。それから俺のイブちゃん 探しの旅が始まったんだよ。そして君に辿りついたんだ。だからワザワザ転校までしてきたんだよ。 ね、春樹ちゃん、澤口嵐なんかとは別れて俺と付き合おうよ」 その言葉に全員が驚いていた。 それはいろんな意味での驚きだった。 あのプロモから春樹まで辿りつく、それも驚きだがそれを可能にした彼の後ろ盾、そしてその執念を 恐ろしいと感じた。 これはストーカーに近いのではないかと航貴は考えた。 鷹也は律の後ろ盾の強さを改めてやっかいだと思った。 そして春樹は・・・・ 「だから違うって。俺の恋人はタムラだよ?」 春樹は律の告白を何でもないように受け止めるとそう答えていた。 その堂々とした春樹の態度に律は顔を顰めた。 「は?だからもう嘘は良いんだって。俺は全部知ってて君を好きなんだからさ!」 「あ、だからそれ違うから。俺はタムラ一筋だから」 噛みあわない二人の会話が始まった。 「タムラ・・・・誰だよ。そいつ?」 「そいつって言うなよ。俺のタムラなんだからな!」 「・・・・田村?ふーん、そいつが君の恋人だって言うのか?」 「ああ、そうだよ!!」 「ふーーん。タムラね。じゃ君がそこまで言うならよっぽど良い男なんだろうな?この俺や澤口嵐より」 その言葉に春樹は自慢げに言う。 「そうだよ!タムラは頭も良いしやさしいし、すっげー格好良いんだよ。俺絶対にあいつ以外に惚れないからさ! だから悪いけど律君は諦めてよ」 その二人の会話を聞きながら航貴と鷹也はいろいろ突っ込んでやりたいと考えていた。 誰が格好良いって?やさしいって? けれど二人は黙ってその会話を聞いていた。 「ふーん。タムラってこの学校のヤツ?」 「そうだよ!」 「ふーーん・・・・・・・・・」 律は黙り込んだ。 春樹はこれで問題は解決したと、そう思った。 自分が好きなのがタムラだと判れば律も諦めるとそう考えた。 すると俯いて考えこんでいた律が顔を上げた。 「もしそれが本当なら・・・本当ならな、君を諦めるよ」 その言葉に春樹は微笑んだ。 問題解決!!春樹は叫びたかった。 そんな二人の会話を鷹也と航貴は複雑な気持ちで聞いていた・・・・・・・・・。 春樹は理科室に戻るとタムラに駆け寄った。 「タムラ、ただいまーーー!」 そう言う春樹がご機嫌だったのでタムラは作戦が上手くいったのだと思った。 いろいろ相談の上、タムラは留守番でいいだろうという事で実行された作戦だったが タムラは待っている間それなりに春樹の心配をしていた。 隣に座る春樹にタムラは紅茶を出しながら聞く。 「上手くいったんですか?」 「ああ」 「三枝さんとは・・・その・・・キスとかはしてないんですよね?」 その言葉に春樹は紅茶のカップを手にしながら頷く。 「当たり前だろう!」 その言葉にタムラは安堵する。 「律君はイヴのファンだったみたいなんだ。それで俺と嵐さんが恋人なんだろうって言われてさ」 タムラはその言葉にピクリと反応した。 イヴの正体が春樹とバレたんであればぜんぜん大丈夫じゃないだろうと思った。 この人はその事で恐喝されるとかは考えてないのか? タムラは横目で見ながら考えた。 すると春樹はニコニコしながら言った。 「嵐さんが恋人って誤解は解いといたよ。俺が好きなのはタムラだからさ」 その言葉にタムラは冷や汗をかいた。 「・・・・・・・もしかして僕達の事バラしたんじゃ・・・?」 その言葉に春樹は笑顔で答えた。 「ああ、俺が好きなのはタムラだって話したよ」 その言葉にタムラは十字をきりたくなった。 「また僕はいらぬ恨みを買うんですね・・・・・・」 「ん?」 春樹は無邪気に言う。 「大丈夫だよ。タムラはすっごくやさしくて格好良いから他の人間は好きにならないって ハッキリ言っておいたから!」 その発言にタムラは頭を抱えた。 「うわーーー!!なんてデマカセ言うんですか?!そんなの僕の顔みたらその人怒り狂いますよ!!」 「何で?」 どこまでも無邪気にトラブルの種をまく春樹にタムラは頭痛がしていた。 「タムラ、タムラ!」 「・・・・・・・・なんですか?」 タムラはイヤそうに春樹を見た。そして飲みかけのコーヒーを一口すすった時、春樹は言った。 「キスして・・・・」 ブッ!! タムラはコーヒーを噴き出した。 「え、ええ?」 動揺するタムラに春樹は真顔で言った。 「今日はその・・・他のヤツになんか触られたりしちゃったから・・・それ、イヤだから・・・ だからタムラがそれを吹き飛ばしてよ・・・・・・・」 赤くなりながらも真剣に言う春樹にタムラの胸が熱くなる。 そしてタムラは立ち上がると両手を広げて椅子に座ったままの春樹を抱きしめた。 「僕も・・・・やっぱり貴方が他の人に触れられるのはイヤですね・・・・・・・・」 その言葉に春樹は少し嬉しくなった。 不器用で意地っ張りのタムラがヤキモチを妬いたという告白。 春樹は黙って目を閉じた。 するとタムラがやさしく春樹の唇にキスをした。 そのキスに春樹は満たされた。 タムラと居れば幸せ。春樹はそう思っていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 中庭の見える図書室の窓際に一人の生徒がいた。 彼は一人、黙々とページをめくる。 黒い髪に釣り目の黒い瞳。それは律だった。 律は春樹に言われたタムラという名前を手がかりに学園名簿をめくった。 「何でないんだよ!」 叫ぶと律は両手で髪の毛を掻き混ぜる。 「これで最初から最後まで8回は見たぞ?なのに何で見つからないんだよ!!」 律は「田村」という苗字の生徒を捜していた。 まさか下の名前が「タムラ」とは夢にも思っていなかった。 そしてタムラを発見しても「美形の少年」と思い込んでいる律はまたも混乱することになる。 律の不幸は始まったばかりだった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 |
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