16・神が創った世界
真郷は先程と変わらず、アイアンの椅子に腰かけていた。
ミチルが戻ってきた事に気づくと、美しく微笑する。
「お茶を淹れなおした所だよ。お菓子もほとんど手つかずだから、たくさん食べてよ」
「マシロ」
ミチルは緊張した面持ちで、真郷の前に立つ。
「マシロ、聞いて、僕は君の事が好きなんだ」
ドクドクと喉の奥で心臓が脈打っているようだった。
真郷はじっとそんなミチルを見つめ、そしてフっと微笑んだ。
「そんなこと知ってるよ」
「あ……そ、そっか……じゃなくて!」
ミチルは赤い顔で叫ぶ。
「僕は、マシロの事が大好きなんだ! 独り占めとかしたい位に、いつだってキスしてたい位に!
あの王子と薔薇のように……!」
「ミチル」
穏やかな声で真郷に呼ばれ、ミチルはドキリとしながら見つめ返す。
「君はすぐに忘れてしまうから困るよ」
「え?」
真郷は立ち上がると、呆けているミチルに近寄る。
「僕がいくら君を好きだって言って抱いても、君はすぐに忘れるくせに」
「え?」
真郷は優しくミチルの頬を包み込む。
「そうだね、どのあたりから君は忘れてしまうんだろう?
それとも僕が悪いのかな?
いつも君に愛を告白する時に、世界の仕組みの事まで口にしてしまうから」
「マシロ? なに、なんの話?」
問いかけるその唇に真郷は口づけた。
「ん……」
甘いキスのあとで、ゆっくりと目を開けると真郷の瞳とぶつかった。
「君は僕に、王子か薔薇かと聞いた。けれど僕はそのどちらでもないし、どちらでもあるんだ」
ミチルは陶酔したように美しい真郷を見つめる。
「マシロの言葉はいつも難しいよ……」
真郷は苦笑する。
「君はあくまで、何も知らない一般人でいたいんだよね?」
「……だから何のこと?」
首を傾げるミチルの髪を真郷は撫でる。
「この世界は神が作った物だよ。そして神は自分に似せて王子と薔薇を作ったんだ」
「それってシオンやスルガが言っていた、星の世界の仕組みだよね?」
「ああ、そうだよ。彼等の言っている事は正しいよ」
「でも、僕らのいるこの世界はそんな理で成り立っていない。この世界には王子も薔薇も存在していない」
「うん、その通り。だってここは神のいる世界だからね。王子も薔薇も必要ないのさ」
「神がいる?」
ミチルが呟くと、真郷は微笑んだ。
「そう、君が神だ」
「え?」
薔薇園の薔薇が、風もないのにざわめいた。
「君が全知全能の神だよ。君はこの世界や、他の星の世界を創り、王子と薔薇のシステムを創った。
そして自分自身は記憶を消して、一人の少年としてこの世界で溶け込んで暮らしているんだ。
僕はそんな君のパートナーだよ。王子の役割も薔薇の役割もこなすね」
「僕が神……? まさか……」
真郷はミチルの手を取ると、その指先に口づけた。
「良いよ、君は信じなくても。どうせ、すぐに忘れてしまうからね。
ただ君が、僕と自分の関係を見て、王子と薔薇の仕組みを思いついた事は
覚えていて欲しい気もするな。だって僕らは、彼等の目指すべき関係なんだからさ。
君はもうとっくに気付いていたんだよ。
人にはたった一人の特別な存在「愛する人」が必要なんだってね」
「マシロ……僕は……」
「良いよ、何も言わないで。難しいと言うのなら、僕が君を愛している事だけ感じて」
真郷はミチルに口づけた。
「ん……」
甘い口づけに、ミチルは黙って目を閉じた。
真郷はミチルのシャツのボタンをゆっくりと外していくと、その中に手を入れる。
「ん……」
胸の突起を摘ままれて、ミチルは甘い声を漏らす。
「あん……マシロ……」
「もっと触って欲しい?」
聞かれてミチルは頷いた。もう思考が働かない。
ただ真郷の言葉に素直に答えていく事しかできない。
「ここは……?」
真郷はミチルのズボンの中に手を入れた。ミチルのそこはすでに蜜を溢れさせていた。
「ああっ……」
切なく甘い声が漏れた。真郷は目を細める。
「君は快楽にとても従順だね。すごくかわいいよ」
言いながら真郷はミチルのモノを取り出し、外気にさらす。
先端を人差し指で押さえながら、グリグリと刺激すると、ミチルは苦しそうな声を漏らす。
「……ったいよ」
「痛い? 気持ち良いんじゃないの?」
ミチルは真郷の肩にしがみ付きながら首を振る。
「仕方ないな、じゃあ、少しやさしくしてあげる」
真郷はゆるゆるとミチルのモノを擦った。
ミチルは完全に力が抜けてしまっていた。
そんなミチルをベンチに寝かせると、真郷はミチルの蕾に指を入れた。
「あ……」
ミチルは声を漏らしたが、それは痛みではなく悦びの声だった。
真郷は指を中でグリグリと動かす。
ミチルが悦ぶ場所を全部覚えているような、そんな的確な動きだった。
「あ、あ、うん……」
ミチルは真郷の指を受け入れながら、その動きに合わせて腰をゆるく振っていた。
より強い快楽が得られるようにと、体を押し付ける。
「いやらしい神様だね。でもとても綺麗でかわいい」
真郷はミチルの前髪を撫であげると、額にキスをした。
ミチルは唇でなかったのが不満と言うように、真郷の唇を求めた。
「本当に、かわいい」
呟くと真郷は、唇にキスを落とす。
するとミチルの方から強く、真郷の口を吸う。
「は……んっ……」
真郷の体を強く抱きしめると、ミチルは真郷に懇願する。
「もう、マシロを頂戴。僕……僕は……」
「うん、いっぱいあげるよ」
真郷は指を引き抜くと、自分自身をそこに入れていく。
「あ……ああ……!」
ミチルは真郷に腕を回して抱きついた。
体の中にある、真郷自身の熱いモノを感じる。
「うん……マシロがいっぱい……嬉しい……」
「嬉しいか……昨日も、彼等に蜜をもらったんじゃないの?」
ミチルは首を振る。
「あれは、だって、僕のじゃなくて、サラとアカリのだから……」
「ああ、そうだね、うん……」
行為としては同じだが意味が違う。
二人の王子と薔薇はミチルの体を通して交わっていたのだから。
「それに都合が悪い事は、君は全部忘れてしまうしね、君を責めても……はっ……意味がないよ」
真郷はミチルの中で腰を動かしながらそう囁いた。
普段クールな真郷の顔が上気して、息が上がっていく。
「マシロ……好き……」
ミチルの告白に真郷は口角を上げる。
「うん……分かっているよ……僕も、同じ位に好きだからね……」
真郷の言葉に、意識を半分以上手放しながらも、ミチルは満足そうに微笑んだ。
昔。神様は独りぼっちだった。
全知全能ゆえの孤独。
そこで一人の人間を創った。
その人間を神は愛し、愛されるようになった。
神はたくさんの星を創造し、そこに自分と愛する人間と同じモノを創った。
それが王子と薔薇だった。
やがて神はすべてを忘れ、人間として生きる事を決めた。
教室に入ると、真郷はいつものように何かの本を読んでいた。
「おはよう、マシロ、今日もブ厚い本を読んでいるね。それってなんの本?」
「ああ、これか。うん……聖典みたいなものだよ」
「聖典? マシロって宗教に興味あったっけ?」
「いろんなモノに興味があるんだ。
まぁ、政治の本とか、世の中の摂理の本だと思ってもらっても良いけど」
ミチルは頭を軽く押さえる。
「うーん、難しい事言われてもわからないよ」
「うん、そうだね。でも世界を統べるには必要な知識なんだよ」
「もっと、簡単に僕に分かるように話してくれる?」
ミチルが言うと、真郷は微笑した。
「そうだね。じゃあ王子と薔薇の話でもしようか?」
「え? 王子と薔薇? なに、それって……」
真郷はふっと息を吐いて肩をすくめる。
「その事も忘れてしまっているんだね。まぁ仕方ないか。
神様として暮らしていくのは、知りすぎていて、つまらないものね」
「マシロ? 何か言った?」
「いや、何も言っていないよ。じゃあ、二人の王子とその薔薇の話でもしてあげようか?」
「わ、なになに、楽しみ。聞かせて……」
真郷は王子と薔薇の話を始めた。
2012.4.21 RIYO
このお話のモチーフは、もちろん、大好きな星の王子さま。
これは私なりの星の王子さまという感じです。
最後までマシロとミチルの関係が何なのか、考えながら読んで頂けていたなら嬉しいです。
次はまたバカなお話をアップの予定ですが、このお話のような幻想系も
楽しんで頂けたら嬉しいなと思います。
読んで頂き、ありがとうございました。