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桜の花は散りかけていた。 庭の土の上に桜の絨毯が出来上がる。 学校から帰宅した僕は地面に立ち、花弁を散らし続ける桜に手をかける。 「高彬」 声をかけると桜から浮かび上がるように高彬が出てくる。 「お帰り、今日も君は綺麗だね」 「そんな恥ずかしいセリフ、言わないでくれよ」 僕の言葉に高彬は微笑む。 「君は照れ屋だね。君は事実とても美しいのに」 「僕は・・・」 僕の顎を高彬がつまむ。 「きっと今までも、僕のように君に心奪われるモノがいたんだろうね。人も人以外も」 僕はあえて答えなかった。 「前から聞きたいと思っていたんだけど、君の弟は本当に血の繋がった弟なのかい?」 その言葉に僕はふっと目を細めた。 「兄弟だよ。刹那は僕にとってとても大事な」 「大事ね、それにしたって彼の君への思いは呆れる位に激しいね、苛烈というか熾烈というか。 普通そこまで兄を愛せるものかな?」 僕はその言葉に微笑する。 「そうだね、でも嬉しいものだよ。そういう風に好かれるのは。 ああも純粋に愛されると、僕も刹那をかわいいと思ってしまうんだ」 僕はそよぐ風に前髪をあおられる。 桜の木からは花弁が舞い散る。 「刹那は本当にかわいいんだ。自分をただの人間だと信じてるんだから」 その言葉に高彬は訊ねる。 「彼は何者なんだい?」 「大事な家族だよ」 僕はそう言ってから言葉を足す。 「刹那はかつて僕を庇って命を落としたんだ。けれど刹那はその事をすっかり忘れているんだ。 自分が幽霊だという事も忘れ、今も自分は生きて、僕と生活していると思っている」 高彬は微妙な表情でそれを聞くと呟く。 「幸せなのか、不幸なのか、僕には分からないな」 僕はその言葉に微笑む。 「幸せだよ。いや、僕が幸せにするよ。彼を悲しませる事がないように、真実を隠して兄弟として 彼を大事にする。ああ、さっき君は僕に刹那は弟かって聞いたね。ごめん、それに関しては ちょっと違うかもしれない。だってかつて刹那は僕の兄だったんだ」 「え?」 流石の高彬も驚いたように僕を見る。 桜の舞い散る中で、僕は微かに切なさを秘めながら微笑んで言う。 「彼が僕を庇って死んだ時、彼は僕の兄だった。けれどいつの間にか僕は彼より 年上になってしまった。そしてその頃から、辻褄合わせのように、刹那は僕を兄と呼ぶようになった。 だから僕は彼の兄を演じているんだよ」 命をかけて僕を守ってくれた人。 僕を愛してくれた人。 そんな彼がヒトデハナイモノになってまで、僕を欲しいと言ってくれた。 ならば僕はいくらでも彼に僕を与えられる。 兄であり、弟である刹那を僕も愛しているんだ。 高彬はじっと僕を見ていたが、やがてやさしく微笑んだ。 「やっぱり君が好きだな。僕は刹那が羨ましいよ」 その言葉に僕も笑った。 その時、玄関の引き戸が引かれた。 「ただいま」 「刹那が帰ってきた。あまり君と話すと刹那が妬くから・・・」 「うん、じゃあ暫く僕は消えるとするよ」 高彬はそう言うと桜の木に溶けるように消えた。 花弁だけが降り注ぐ。 「兄さん!」 刹那は中庭に下りてくる。 僕は刹那を待ち構えると抱きしめた。 「お帰り」 桜の花の散る庭で僕達は抱き合った。 兄であり弟であり、ヒトではない刹那。 それでも彼は僕にとって愛すべき大切な存在。 美しい桜の花の舞う中、僕は刹那に微笑んだ。 |
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2009.3.12 RIYO この話は出来たらオムニバスで不定期連載みたいにしたいなと思って書きました。 毎回いろんな人外と交わる久遠の話という感じで。 先にギアスで書いたのですが、そっちは攻目線でした。 もしもこの話の刹那サイドが読みたいと思ったら、ギアスサイトの方で名前を頭の中で 変換して読んで頂けたらと思います。 次回はいつになるか分かりませんが、この話でちょっと伏線いれておいたので いずれ回収したいなと思っています。 感想など頂けると嬉しいです。 |
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