◎クネクネ◎

皆さんも「クネクネ」を見た事があるだろうか?
名前は聞いた事が無くても、これからの文章を読んで思い出す事があるかも知れない。

そんな近くて不思議な話です。


その1

わたしの弟から聞いた本当の話です。
弟の友達のA君の実体験だそうです。

 A君が、子供の頃A君のお兄さんとお母さんの田舎へ遊びに行きました。
外は、晴れていて田んぼが緑に生い茂っている頃でした。
せっかくの良い天気なのに、なぜか2人は外で遊ぶ気がしなくて、家の中で遊んでいました。
ふと、お兄さんが立ち上がり窓のところへ行きました。
A君も続いて、窓へ進みました。

お兄さんの視線の方向を追いかけてみると、人が見えました。
真っ白な服を着た人、(男なのか女なのか、その窓からの距離ではよく分からなかったそうです)
が1人立っています。
(あんな所で何をしているのかな)と思い、続けて見るとその
白い服の人は、くねくねと動き始めました。
(踊りかな?)そう思ったのもつかの間、その白い人は不自然な
方向に体を曲げるのです。
とても、人間とは思えない間接の曲げ方をするそうです。
くねくねくねくねと。

A君は、気味が悪くなり、お兄さんに話しかけました。
「ねえ。あれ、何だろ?お兄ちゃん、見える?」
すると、お兄さんも「分からない。」と答えたそうです。
ですが、答えた直後、お兄さんはあの白い人が何なのか、
分かったようです。
「お兄ちゃん、分かったの?教えて?」とA君が、聞いたのですが、
お兄さんは「分かった。でも、分からない方がいい。」と、
答えてくれませんでした。

 あれは、一体なんだったのでしょうか?
今でも、A君は、分からないそうです。
 「お兄さんに、もう一度聞けばいいじゃない?」と、
私は弟に言ってみました。
これだけでは、私も何だか消化不良ですから。
すると、弟がこう言ったのです。
 「A君のお兄さん、今、知的障害になっちゃってるんだよ。」

・・・・さっそく嫌な感じですね。(汗)


その2

そこれは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事である。
年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、
早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。
都会とは違い、空気が断然うまい。
僕は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。

そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風か止んだ。
と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。
僕は、『ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!』と、
さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。

すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。

その方向には案山子(かかし)がある。
『あの案山子がどうしたの?』と兄に聞くと、
兄は『いや、その向こうだ』と言って、ますます目を凝らして見ている。

僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
すると、確かに見える。


何だ…あれは。

遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。

しかも周りには田んぼがあるだけ。
近くに人がいるわけでもない。
僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。

『あれ、新種の案山子(かかし)じゃない?きっと!今まで動く案山子なんか無かった
から、農家の人か誰かが考えたんだ!多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』

兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。

風がピタリと止んだのだ。

しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。

兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、気になって
しょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。


兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、
はりきって双眼鏡を覗いた。

すると、急に兄の顔に変化が生じた。

みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、
ついには持ってる双眼鏡を落とした。

僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。

『何だったの?』

兄はゆっくり答えた。

『わカらナいホうガいイ……』


すでに兄の声では無かった。

兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。
僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと、落ちてる双眼鏡を
取ろうとしたが、兄の言葉を聞いたせいか、見る勇気が無い。

しかし気になる。

遠くから見たら、ただ白い物体が奇妙にくねくねと動いているだけだ。
少し奇妙だが、それ以上の恐怖感は起こらない。

しかし、兄は…。

よし、見るしかない。

どんな物が兄に恐怖を与えたのか、自分の目で確かめてやる!
僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとした。
その時、祖父がすごいあせった様子でこっちに走ってきた。
僕が『どうしたの?』と尋ねる前に、
すごい勢いで祖父が、
『あの白い物体を見てはならん!見たのか!お前、その双眼鏡で見たのか!』
と迫ってきた。
僕は『いや…まだ…』と少しキョドった感じで答えたら、祖父は『よかった…』
と言い、安心した様子でその場に泣き崩れた。

僕は、わけの分からないまま、家に戻された。


帰ると、みんな泣いている。
僕の事で?いや、違う。

よく見ると、兄だけ狂ったように
笑いながら、まるであの白い物体のようにくねくね、くねくねと乱舞している。

僕は、その兄の姿に、あの白い物体よりもすごい恐怖感を覚えた。

そして家に帰る日、祖母がこう言った。

『兄はここに置いといた方が暮らしやすいだろう。
あっちだと、狭いし、世間の事を考えたら数日も持たん…うちに置いといて、何年か
経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…。』

僕はその言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。
以前の兄の姿は、もう、無い。
また来年実家に行った時に会ったとしても、それはもう兄ではない。

何でこんな事に…ついこの前まで仲良く
遊んでたのに、何で…。
僕は、必死に涙を拭い、車に乗って、実家を離れた。

ずっと双眼鏡を覗き続けた。『いつか…元に戻るよね…』そう思って、兄の元の姿を
懐かしみながら、緑が一面に広がる田んぼを見晴らしていた。そして、兄との思い出を
回想しながら、ただ双眼鏡を覗いていた。


・・・・大丈夫ですか?
僕は凹んできました。(汗)



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