これは一人のヴァンパイアの話。
そのヴァンパイアには美しい彼女がいた。しかし人間だ。
その彼女は、彼がヴァンパイアと言う事を承知で、好きになってくれていた。
 
しかし、所詮は人間とヴァンパイア。老いていく者と老いを知らない者。
彼はいつからか容姿は変る事無く、彼女は自然の流れには逆らえない。
〜彼女をヴァンパイアにしてしまえば、一生今の姿のままで過ごしていけるのだが〜
 
しかし、彼は彼女に自分の様な苦しみを味わって欲しくは無いから。
ヴァンパイアとして生きるには、人と同じには生きてはいけない。
ヴァンパイアは不老不死であるがゆえに、老いる事も死ぬ事すら許されない。
 
そして、彼女は最後の時まで誰にも嫁がず、彼のそばに居てその短い一生を終えた。
「あなたでも涙をみせるのね・・。ふふ、意外・・・ね。」
「・・・最後だから特別だ。」
彼は、彼女と出合った時のままの姿で、彼女の最後を見送った。
 
唯一、彼を受け入れてくれた女性。
ヴァンパイアであろうと、気兼ね無くそばに居てくれた女性。
 
彼にしてみれば一瞬の出来事だったかもしれない。
しかし、彼の永遠とも言える生涯の中で忘れられない時間であった事には変わりは無いのだ。
 
〜ここに来るようになって、果たしてどれだけの時間が過ぎただろうか?
彼女の家族も、既にここに墓があることすら忘れてしまう様な時間が過ぎた・・・・・。

そして、彼は今日も彼女に逢いに来る・・・。
明日も、また明後日も・・・永遠に。

NEXT