蜷川進右衛門親正
(ニナガワ シンエモン チカマサ)

永和三年三月三日生まれ
身長・・七尺
体重・・四十八貫

室町幕府将軍、足利義満の配下として仕える侍。
寺社奉行として「闇国寺」の監査役を務める。

親正自身も幼少時に闇国寺で「仏に仕える儀式」を受けており、
自我を失わず「仏の印」の力を引き出し今だ存命している稀有な存在。


幼い頃に両親を流行り病で失っており、天涯孤独の身。
しかし、彼には大事な女性が居た。

その女性の名は「あやめ」

闇国寺の長年の修行を終え、心を病み荒んでいた親正を助け支え続けている。
今、親正が生き長らえているのも彼女の存在が大きいと言える。




ある日、帰宅した親正はあやめが居ない事に気が付く。
何時も笑顔で迎えてくれるはずのあやめが居ない。

嫌な胸騒ぎがして家を出ると何やら山の方に人が集まっている。
逸る気持ちを抑えつつ人だかりに向かう親正。


「辻斬りが出たそうな・・・・・・」

「まだ若い娘なのに・・・不憫でならん・・」



人を掻き分け、そこに辿り着いた親正を待っていたのは、
むせ返る様な血の臭いと共に横たわる骸と化したあやめの変わり果てた姿だった・・・・。



涙が出ない・・・・・。
涙が出てこない・・・・・・。
途方も無く悲しく苦しいのに一筋も涙がこぼれない・・・・・・。

「仏の印」の力は心までも鉄に変えてしまったのか・・・・・・・・・・。
親正は吼え、己の身を呪った。



その後、あやめを手厚く葬り、下手人捜しに奔走する親正。
辻斬りの姿を見た者は居ないか?と問うとある者が応えた。


「暗くてあまりよく見えんかったが・・・・・
あれは都で出ると噂されている「鬼人」の仕業では無かろうか・・・」



確かに親正もこの噂を聞いた事がある。
近頃、都では鬼人が夜な夜な徘徊し、人を殺めていると言う事を・・・・。
親正から報告を受け、事態を重くみた将軍から
「鬼人討伐衆を至急編成し率い、都から鬼人を除く様」と命が親正に下る。


我には既に失うものは何も無い、
この命を賭しても、鬼人全てを斬り捨てあやめの仇を討つ。


兵を引き連れた蒼色に輝く男が夜の都を駆ける。

己が復讐の為、己が生きる理由を求める為に、

いつの日か己が命燃え尽きようとも彼は闘い続ける・・・・。



「一九三の世界」に戻る