『戦争を止めさせたペンギン』

 

 おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。

 マカロニ君が血相かえて、おいらのところにやってきたんだ。

「アデリー君!アデリー君!たいへんだよ!人間たちが戦争をはじめたんだ!!」

「え〜っ戦争?またドンパチやりはじめたの?」

「そうなんだよ。フォークランドしょ島で殺しあってるんだよ!」

「フォークランドっていうと、マゼラン君が旅に出る前よく行ってたところじゃないの?」

「そうなんだよ。今はマゼラン君は旅に出てるからフォークランドにはいないと思うけれど…」

「よくもまあ〜、人間たちはあきもせずに戦争するよねェ」

「人間たちが戦争すると、必ずその後は爆弾やらなにやらであなボコだらけにされちゃうだろ。せっかくの自然も一面焼け野原…マゼラン君はあの場所が大好きだったんだ。なんとか人間たちに戦争を止めてもらって、フォークランドしょ島の自然を守らなきゃあ!」

「戦争を止めさせるってどうすればいいんだろう?」

「王様にきてみようか?」

マカロニ君とおいらは王様のところへいった。

「また、人間たちが戦争をはじめただって!それは何とかしなければいかんな!アデリーそれにマカロニ、みんなを集めてくれんか?」

って王様にたのまれたからマカロニ君と手分けしてみんなを王様のところに集めたんだ。

「みんなよくきいてくれ!人間たちがフォークランドしょ島で戦争をおっぱじめた」

「王様!また人間たちが戦争をはじめたの?ヤツらもこりないねェ。そんなのほうっておけば?」

って、ケープペンギン君がいった。

「そういうわけにもいかない!今はフォークランドでやってるが、いつ戦場が広がってこっちにやってくるのかわからない。もしそうなったら、みんなも流れ弾に当たるのはいやだろうし、戦争が終わってもみんなが住んでるところは焼けて、やせた土地が残るだけだ!それに、今戦争をやっているフォークランドはマゼランがよく行っていたところだ。だから人間に戦争を止めさせたいんだが…その方法をみんなに考えてほしい」

「おいらいいこと思いついた!名づけて、おしくらまんじゅう大作戦!みんなでおしくらまんじゅうしながら戦場へいくんだよ」

「それで?」

「それで戦争をやっている人間をおしくらまんじゅうの中へまきこむんだよ!」

「それから、それから?」

「戦争しているはずの人間はいつのまにか、ペンギンにまざっておしくらまんじゅうしてるんだよ!そうしたらその人間は戦争する気をなくしちゃうんじゃないかなあ?」

「そんなの絶対ダメよ!おしくらまんじゅうしながら戦場へ、だなんて…そこにミサイルの一本でも打ち込まれたら、みんなそれでおしまいよ」

ってフンボルトさんが反対したんだ。

「歯には歯を、目には目を、ということで戦争をしている人間たちに戦いをいどんだら…」

ってイワトビ君がいったんだ。するとまたフンボルトさんが、

「戦争しているところに戦争しかけてどうするのよ?火に油を注ぐようなものだわ」

って反対したんだ。

「フンボルトさん!いっつも反対ばかりして、キミは何かいいこと考えついたの?」

ってイワトビ君がいいかえした。

「あんたたちがあんまりバカなこというからじゃない!」

「なにがバカなことだ」

「まあ、まあ、みんな少し落ち着いて…そういえばむかし、人間は白い旗を見ると戦争を止めるって何かの本に書いてあったような気がするぞ」

ってシュレーターペンギン先生がいいだした。

「あ〜、思い出したぞ!たしかその本には白旗をふることが人間たちの間で戦争を止める合図になっているとか何とか…」

「先生、それじゃあ、白い旗を人間たちに見せれば戦争は終わるってことか?」

って王様がきいたんだ。

「はい、そう覚えておりますが…」

「ボクがフォークランドへいって、白旗をふってくるよ。だってボクが一番戦場の近くのホーン岬に住んでいるからね!あっと、それでヒゲペンギンさん、潜水艇のレッドサブマリン号をかしてください」

 マカロニ君は一羽、レッドサブマリン号に乗ってフォークランドしょ島へむかった。

 

 一週間後、マカロニ君は無事にもどってきたんだ。

「ボクは海にもぐりながら、フォークランドしょ島の西島と東島の海峡にはいりこんだ。そこで海面に浮き上がって白旗をたてた。はじめ、そこは戦場とは思えないほど静かだった。ボクは海峡をいったりきたりしたんだ。でも、いつの間にかボクのまわりには大きな何隻もの軍艦が取りかこんでたんだ。軍艦はレッドサブマリン号になにもしなかったけれど、とつぜん、たくさんのミサイルが空からふってきたんだ。ミサイルは次々、軍艦に命中した。レッドサブマリン号にもミサイルがあたりそうだったからボクはそこから逃げ出そうとしたんだけれど、軍艦が取りかこんでるからそうかんたんにはいかなかった。と、そこへヨットに乗ってマゼラン君があらわれた。きっと軍艦のかげにかくれてて、ヨットが近づいてきたのを気がつかなかったのかもしれないな。マゼラン君はミサイルがふってくるなか、なんとのんきに笛を吹いていたんだよ!でもその笛の音色がなんとも心地よくって、ボクは戦場にいることも忘れてついウトウトねむっちゃったんだ。

 そうして目が覚めて気がつくと、レッドサブマリン号はマゼラン君のヨットに引っぱられてホーン岬に帰る途中だったんだ。なにがあったのか?マゼラン君にきてみたけれど、『人間たちは戦争を止めたようだよ。マカロニ君!ここからはもう一羽で帰れるよね。ボクはまだまだ旅を続けなければならないんだ』ってマゼラン君はこうこたえて、レッドサブマリン号を引っぱってきたロープをはずしたんだ。そこでマゼラン君と別れた」

って、マカロニ君はみんなにはなしてくれたんだ。

「それじゃあ、マゼラン君の笛が戦争を止めさせたってことかい?」

「よくわからないけれど…おそらく」

「戦争を止めさせる笛の音色か…おいらもきいてみたかったな。きっとマゼラン君、また一つ宝物を見つけたんだね!」

 

 おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。もう、戦争は絶対ダメだよ。