音楽の国の使いから

 

 「それじゃあ、ピンクのうさぎ!今度もダメかもしれんな!!」

 「そ、そんな…黄色いフクロウ先生、オルガンの発表会は2週間後なんですよ」

 「それはわかっておる。お前はいつまで私のところにいるつもりだ!お前と同い年の銀色のクマは上の楽団の第一線で活躍しているというのに…」

 「そんなこといったって…」

 「だいたい今までに何回の発表会にでたんだ?」

という黄色いフクロウ先生の問いにピンクのうさぎはちょっとためらって、

 「16回です」

とこたえました。

 「今回で17回目か…今まで通り同じことをしていたんでは、また同じ結果になりそうだな」

 「そんなあ…どうすればいいんですか?」

 「私は今まで、教えられるものはすべて教えてきたつもりだ。それでダメとなると…それじゃあ、現実の世界の人を教えてみるか?」

 「おいらが教える?なにを?」

 「決まっているだろう。音楽を教えるんだ!ちょうど数日前にお母さんからハーモニカを買ってもらった少年がいる。その子に教えるんだ」

 「少年って、現実の世界の子ですか?」

 「そうだよ」

 「ここ、音楽の国の動物は現実の世界の人と話すことすらできないんじゃないんですか?」

 「その通り。現実の世界の人は音楽の国のことはまったく知らないし、現実の世界ではわれわれのすがたを見ることすらできん。だから現実の世界の少年を音楽の国に引き込まらなくてはならない。こちらに引き込んでくるには、あの子が眠って夢をみる必要がある。そこでだ、この帽子が役に立つ…」

と、黄色いフクロウ先生はト音記号の模様のとんがり帽子を持ってきました。

 「この帽子のとんがった方を現実の世界の寝ている人に向けると、その人が夢をみているかどうかわかるようになっているんだ。夢をみていれば帽子が光る仕組みになっておる。なんでも眠っている人の脳波が”ステージレム”になると夢をみていることが多いそうで、それでこの帽子がステージレムを感知したら、光るそうだ。くわしいことは私にもよくわからんがね…つまり、この帽子の先を眠っている少年に向けて帽子が光るのを待って、光りだしたらお前が夢の世界に入り込んで少年を起こして音楽の国に引き込めばいいんだ。夢の世界というのは、現実の世界とこことの架け橋みたいなものということになるな」

 「それはわかりました。けれど音楽を教えるって…どうやって?」

 「そんなことは自分で考えろ!!それも、まあ、勉強のうちだ…ああ、それからピンクのうさぎ、お前にとって音楽とはなんだ?」

 「そっ、それは、きれいでおごそかで荘厳でとっても大切で…おいらのすべてです!」

 「それだけか?それじゃあダメだな」

 「それだけって、おいらのすべて、以外になにがあるんですか?」

とピンクのうさぎはききましたが、黄色いフクロウ先生はいってしまいました。

 

 ピンクのうさぎは困ってしまいました。自分に音楽を教えるなんてできるのかしら?と困り果ててしまいました。とりあえずピンクのうさぎは教えることになった少年を見に行くことにしました。

 少年のところへ行ってみると、ちょうどハーモニカをを吹いていました。現実の世界では、音楽の国の動物はちょうど透明人間のようになるので、少年はピンクのうさぎが近づいても気付きません。少年の吹くハーモニカの音色は、買ってもらったばかりということもあって、まだへたでつっかえつっかえでした。けれど一所懸命吹いています。ピンクのうさぎは、これならおいらにも教えられるかもしれないぞ、と思ってちょっぴり安心しました。

 「だけど、おいらハーモニカを吹いたことはおろか、なんにも知らないぞ!」

と、思いました。

 そこで、ピンクのうさぎは音楽の国の国立図書館へ、ハーモニカのことを調べに行きました。図書館にある楽器大辞典の”ハーモニカ”のページを開くと、ハーモニカの写真や説明がのっていました。長いアンサンブルハーモニカや小さなシングル、レバーが付いたスライドクロマチックといろいろあります。ピンクのうさぎは、楽器大辞典をながめながら、ハーモニカっていろんなのがあるんだ、と思いました。さっきみてきた少年が吹いていたハーモニカはちっちゃくて穴が10ヶあいているテンホールズと呼ばれているものだとわかりました。

 「へ〜、こんなに小さくてなんだか楽器っていうよりおもちゃって感じだなあ」

と、ピンクのうさぎは思わずつぶやきました。それからハーモニカを吹くには、楽譜といっしょにタブ譜があると便利なことがわかりました。ピンクのうさぎは、音楽を教えるってどうすればいいんだろうか?とりあえず今夜はさっきあの子が練習していた曲をオルガンでいっしょに練習すればいいや、でも明日は?と思いました。そこで楽譜の棚のところへ行きました。

 「確かあの子が持っていたハーモニカのキーはCだったぞ」

 キーがCの曲の楽譜を一曲選び出してそれをコピーしました。コピーした楽譜の余白にハーモニカ用のタブ譜をふっていきました。

 「これで準備はととのったぞ!それにしてもおいらが先生だなんてちょっとカッコいいなあ!そうだ…あの子にあったらまずなんていおうかな、最初がかんじんだぞ!!バカにされちゃあいけないからね」

と、ピンクのうさぎははじめに話しかけるときのセリフを考えました。

 「まずは起こさなきゃならないのか、そうだなあ、せき払いでもして『エヘン、エヘン、なあ、起きてくれたまえ!おいらは音楽の国からやってきた大先生だよ!!これから君に音楽というものをとくべつにお教えてあげよう!!』な〜んてね、すごくカッコいいや、エヘヘヘ…」

ピンクのうさぎは本当は落ちこぼれなのに、このときはえらい先生になったような気分でうすら笑いを浮かべていました。

 「おい!ピンクのうさぎ!なにをにやけているんだ?」

ピンクのうさぎは黄色いフクロウ先生がそばにやってきたことにまったく気がつきませんでした。

 

 夜になり、現実の世界の少年は眠りました。ピンクのうさぎは少年のところに行って、黄色いフクロウ先生からもらったとんがり帽子の先を少年の方に向けました。帽子は光りませんでした。少年はまだ夢をみていないようです。ピンクのうさぎはとんがり帽子を持ったまま待ちました。待っているとだんだん胸がドキドキしてきました。

 「やっぱりおいらなんかに音楽を教えるなんてできるのかしら?大先生なんてウソついたってすぐにばれちゃうよな…ああ、どうしよう、なんて話しかけたらいいんだろう?ここでやめて帰ったら黄色いフクロウ先生におこられるし…」

どうしよう、どうしようと考えれば考えるほど、ドキドキしてきました。もう頭の中はまっ白…。帽子を持つ手は汗でびっしょり…。胸のドキドキは頭のてっぺんの耳にまで伝わってきました。

 とんがり帽子が光りだしました。ピンクのうさぎは持っていた帽子をかぶりました。まずはせき払いをするんだったと思い出して、わざとせき払いをしようとしたけれど、

 「エッヘン、ア゛ー、ゴホゴホゴホ…」

と、本当にむせてしまいました。眠っている少年に、なんて呼びかけたらいいか?わからなくなってしまいました…。    


 とにかく少年を起こさなくてはならないと思ったピンクのうさぎはとっさに、

 「ねえ、ねえ、ちょっと起きてよ!!」

と、頼むように呼びかけました。すると少年は目を覚ましました。ピンクのうさぎのことを見て、不思議そうにしています。だから、ピンクのうさぎは安心させようと思って、

 「そう、ここは夢の中だよ」

と、いってやりました。少年は、

 「君はいったい誰なの?」

と、きいてきました。

 「おいらのことかい?おいらはピンクのうさぎ。音楽の国からやってきたんだ」

 ピンクのうさぎはまだ胸がドキドキしていたので、

 「君はこの前、お母さんからハーモニカを買ってもらったね。きのう、君が練習してるのをちょっと聴いちゃったんだ」

と、さっそく本題の入ろうとしました。そして、

 「おいらにハーモニカを聴かせてよ!」

と、たのんでみました。少年は最初はいやがったけれど吹いてくれました。徐々にピンクのうさぎは落ち着いてきました。ピンクのうさぎは少年を自分のオルガンのところへ連れていきました。そしてピンクのうさぎのオルガンと、少年のハーモニカで合奏しました。少年は、ピンクのうさぎのオルガンがボロボロなのを見て、

 「君のオルガンは何でそんなにボロボロなの?」

と、きいたので、ピンクのうさぎは正直に落第生だから音楽の国からボロボロなオルガンしか与えられていないとこたえました。そして昼間、ピンクのうさぎが作ったキーがCの曲の楽譜を少年にわたしました。

 「……それじゃ、またあした!!」

と言って、この日は終わりにしました。

 朝が来ました。ピンクのうさぎは、これじゃあ音楽を教えたっていうより、ただ、いっしょに練習しただけじゃないか、と思いました。今では「大先生だよ!」なんて浮かれてたときのことがなつかしくさえ感じられました。それに「おいらは落第生だ」といってしまったことにすごく後悔しました。そんなこといったら、もう今夜からあの子はおいらをムシしてしまうかもしれない。あ〜あ、そうしたらどうしようと心配しました。でも、あれはあれでよかったのかもしれない…と考えなおしました。どだい、おいらには教えるなんて10年早かったんだ!あの子といっしょに練習すればそれでいいじゃないか、と思うようになりました。けれど、わたした楽譜の曲を練習してくれるかどうか、心配でした。あとで、あの子のようすを見てこようと思いました。

 ピンクのうさぎは今夜の準備にとりかかりました。国立図書館へ行き、きのうと同じように楽譜を用意しました。今度はキーがFの曲を選びました。楽譜をコピーして、譜面の下にタブ譜を書き込みました。曲のキーがFなので”移動ド”をしてタブ譜を書きました。これがなかなか複雑な作業で、はじめのうちはてまどってしまいました。終わりの方に近づくにつれて慣れてきました。

 やっとのおもいでタブ譜を書き終えて、一息ついていると黄色いフクロウ先生がやってきました。

 「ピンクのうさぎ、どうだった?現実の世界の少年は?」

 「まあまあです」

 「まあまあか…それはそうと、発表会の準備は進んでいるのかね?今回は自分で曲目を選びなさい。練習も自分でやるんだ!」

 「え〜、先生!おいらを見捨てないでください」

 「バカもん!見捨てるなんて、するわけないだろう!出来の悪い生徒ほどかわいいもんだ!ただ今回は今までとはちがった方法が必要だと思ったんだ。だから相談したいときには、いつでもきなさい。いいね、わかったね」

 「そんなあ」

このあとピンクのうさぎはさっそくオルガンの発表会の練習をしました。

 夕方になり、ピンクのうさぎは少年のところへいきました。少年は学校から帰ってきて自分の部屋でハーモニカを吹いていました。一枚の楽譜とにらめっこをしています。それを見たピンクのうさぎははねるように喜びました。

 「あんなに一所懸命練習してるなんて…おいらもがんばらなくちゃ!」

 夜になり、少年は手にハーモニカを握りしめ、眠りました。ピンクのうさぎは昨夜と同じようにとんがり帽子を少年の方に向けて帽子が光るのを待ちました。しばらくすると少年の脳波がステージレムになり、帽子が光りだしました。ピンクのうさぎはなんて呼びかけて起こせばいいのか?また迷っていたけれど、結局、きのうと同じように、

 「ねえ、ねえ、ちょっと起きてよ!!」

と呼びかけました。少年は眠い目をこすりながら起き上がりました。ピンクのうさぎは、夕方に少年がハーモニカの練習をしていたのを見たのだけれど、

 「きのうおいらがあげた楽譜でハーモニカの練習をしたかい?」

と、わざときいてみました。

 「うん、学校から帰ってからだけど、練習したよ」

 「じゃあ、おいらのオルガンにあわせて吹いてみてよ」

 きのうと同じようにピンクのうさぎのオルガンと、少年のハーモニカと合わせてこんどはキーがCの曲を練習しました。少年ははじめはうまく吹けないけれど、何回かくり返し合奏するうちに、上手に吹くことができるようになりました。そこで、ピンクのうさぎは昼間作っておいたキーがFの楽譜を少年にわたすと、

「それじゃ、またあした!!」

といってこの日の少年との練習を終わりにしました。

 それから朝がきて、ピンクのうさぎは図書館へ行って楽譜を作り、そのあと発表会の練習をしました。そして夜になると少年のところへいって、いっしょに練習をしました。そんなことをくり返す日々が続きました。ピンクのうさぎは大いそがしでした。オルガンの発表会はもう間近でした。寝る間もおしんで練習しました。

 そんなある夜、E♭の曲を少年と練習していました。ピンクのうさぎは、ハーモニカを吹いている少年を見て、”ずいぶんこの子は楽しそうにハーモニカを吹いてるなあ!”と思い、なんだかこっちまでそれにつられて楽しくなってきました。このときです!ピンクのうさぎは音楽ってこんなに楽しいものだったなんて!とあらためて感じました。音楽って楽しい!…。

 少年との練習を終えたピンクのうさぎはしみじみ考えました。そういえば少年がなかなか眠ってくれないことがあったけれど、あれはおいらと練習するのが楽しみでなかなか眠れなかったのかも…?ここ数日間、ピンクのうさぎは寝るひまも食べるひまもおしんで本当にいそがしく練習していました。けれどあんまりつらくはなかったのです!それも楽しいから?と思いました。ピンクのうさぎは黄色いフクロウ先生のところへ行って、

 「黄色いフクロウ先生!音楽ってこんなにも楽しいものだったんですねえ!!」

と、さけぶようにいいました。

 「そうか、そのことにやっと気が付いてくれたか?そうだよ、音楽とは楽しいもんだ。ときには心をなごませてくれる。だからといって楽しまなければならないっていうこともないが、楽しむっていうのはふざけるっていうのとはちがうからね!楽しいときには楽しまなくちゃな!お前は今まで発表会で何度も失敗しているあいだに、いつしか音楽を楽しむことを忘れてしまって、音楽をおごそかだとかきれいだとか、何か音楽にたいしてかまえてしまうことが多くなってしまった。それがすべて悪いっていうんじゃないが…もっと楽しんだ方がいい!演奏する方が楽しめばそれだけ聴く方も楽しくなるというもんだ。発表会で演奏するときには楽しめれば楽しい方がいいに決まっている。そうはいってもなかなかできることじゃながね…でも今度の発表会はなんとかなりそうじゃないか?」

 「はい!」

 「それでこそあの少年のところへ教えにいったかいがあったというものだ」

 

 数日がすぎて、ピンクのうさぎが図書館でF♯の曲の楽譜にタブ譜をふり終わって、発表会の練習をしようと思ったときでした。ピンクのうさぎは今度の発表会でオルガンの腕前を音楽の国のえらい先生に認められたら、その先生のもとで猛練習しなくてはならなくなる。もしもそうなったら、現実の世界の少年といっしょに練習することができなくなってしまう!あの子と別れなくては…。そう思うと、発表会の練習にみが入らなくなってしまいました。だって、少年との練習は楽しくて楽しくて…。そこでまた、黄色いフクロウ先生のところへ行って、そのことを話しました。黄色いフクロウ先生は、

 「それは仕方のないことだよ。ところで、お前の最大の目標はなんだったんだ?」

とたずねました。

 「それは、それは音楽の国の大聖堂でパイプオルガンを弾くことです」

 「そうだろう。大聖堂のパイプオルガンを弾きたいのなら、まず発表会で私よりもっとえらい大先生に認められることが必要なんだ!大先生のところで練習しなくちゃ、パイプオルガンなんてありえないんだぞ!」

 「それはわかってるけど…」

 「今までなんのために練習を積んできたんだ?それにあの子はもうひとりで十分にハーモニカを吹いていける。お前はあの子から音楽の楽しさをあらためて教わったと同時に、あの子に音楽の楽しさを自然に教えたんだよ。もうそれでいいじゃないか?」

 ピンクのうさぎは悩んでしまいました。いつまでも少年といっしょに練習することができるわけじゃないということはわかっていたし、大聖堂のパイプオルガンを弾くことは大きな夢でした。発表会は3日後にせまりました。

 次の日の夜、ピンクのうさぎと少年はいつものように練習しました。その夜はF♯の曲でした。ピンクのうさぎは発表会のこと、別れなければならなくなるかもしれないことを少年にいわなければならないと思っていましたが、

 「あしたは今まで練習してきた曲を、12曲あると思うけど、それをぜんぶ通しておいらのオルガンと君のハーモニカで演奏してみようよ。だから今日は君にあげる新しい楽譜はないよ!それじゃ、またあした!!」

といって、そそくさとこの日の練習を終わりにしてしまいました。別れなくちゃならないと思うと悲しくて、つらくて仕方がありません。

 …そして、ピンクのうさぎと少年がいっしょに練習できる最後の夜。今までいっしょに練習してきた12曲を合奏しました。ピンクのうさぎはせいいっぱいボロボロのオルガンを弾きました。そして、演奏し終わるとピンクのうさぎは泣きながらあしたの発表会のことやもう会っていっしょに練習することができなくなるかもしれないことを少年に告げました。少年はそれを聞いてびっくりしたような困ったような表情をしました。ピンクのうさぎは、

 「もしもおいらがあしたの発表会で音楽の国のえらい先生に認められたら、君にいいものをプレゼントするよ!約束する!!それから、君といっしょに練習できてとっても楽しかったよ!必ずいいものをプレゼントするよ!それじゃ、さようなら!!」

といって少年と別れました。別れぎわ、少年が、

 「僕はもう君と会えないなんていやだ。もっといっしょに練習しようよ!!」

と叫んでいるのがピンクのうさぎの耳にとどきました。

 朝がきました。今日はいよいよオルガンの発表会の日です。ピンクのうさぎは今までに16回も発表会にでているのだけれど、発表会でオルガンを弾く前にはさすがに緊張して胸がドキドキしてしまいそうになりました。しかし今回の発表会では楽しんで演奏しようと思ったので、今までになくうまくオルガンを弾くことができました。すると、音楽の国の白いコウモリ大先生が「私のところで練習してみないか?」とピンクのうさぎをさそいました。そうです!ピンクのうさぎは白いコウモリ大先生にオルガンの腕前を認められたのです!!これで大聖堂のパイプオルガンに一歩、近づきました。でも、これで現実の世界のあの少年といっしょに練習することができなくなりました。

 そして、音楽の国からお金をいくらかもらったピンクのうさぎは、そのお金であの子が持っていたキーがC以外のD♭やGのハーモニカを音楽の国で買いました。夜になって、少年のところに行きました。今夜は起こしません。眠っている少年の枕元に11本のハーモニカが入っている箱を置きました。耳と耳のあいだにのせてきたとんがり帽子をいつもの癖で思わず少年の方に向けてしまいました。帽子が光りました。少年は夢をみているみたいです。ピンクのうさぎはちょっと夢の中をのぞいてみました。それは、少年とピンクのうさぎがいかにも楽しそうに合奏している夢でした。少年の夢をみたピンクのうさぎは少し安心したのか、持っていたとんがり帽子を箱の上にのせました。

 「とつぜんあらわれて、急にいなくなって本当にごめんよ!おいら、君のことは決してわすれない。これからも君に負けないようにがんばるよ!音楽を楽しむよ!そしていつか、いつかおいらが大聖堂のパイプオルガンを弾けるようになったら、君を音楽の国の大聖堂に招待するよ!それじゃバイバイ!」

と少年を起こさないように枕元でそっとささやきました。