実はね、もう5年くらい前のことなんだけれど、ある日ボクはサメに追われて夢中で逃げてたらおじいさんの網に引っかかっちゃったことがあるんだ。網は引き上げられてボクはもうダメかと思ったんだよ。だって人間たちはよくボクたちペンギンを釜ゆでにするっていうだろ。ボクもてっきりそうなるかと思ったんだ。ところがおじいさんは違った。
おじいさんは網にからまったボクを見つけるとすぐに網からはずしてくれたんだ。でもボクはフリッパーや足にケガをしちゃって、動けなかったんだ。するとおじいさんはボクを大事に抱きかかえて自分の家につれていって、足に副え木をあててくれたり、魚をくれたりしてくれたんだ。それで、ボクが元通り元気になると、海に返してくれたんだよ!」
「マゼラン君のことを助けてくれたのかあ…めずらしい人間もいるものだねぇ」 「そうなんだよ!だから今日はその恩を返したくて…」 そういうとマゼラン君はふたたび巻き網に魚を追い込みはじめた。そして巻き網のなかに魚があるていどたまると、網は引き上げられたんだ。マゼラン君は網といっしょに海面に上がっていった。おいらもマゼラン君についていったんだよ。マゼラン君は海面から首を出して年老いた漁師にむかってフリッパーを振ったんだ。おじいさんはこっちを見て、最初はビックリしてたけど手を振ってくれたんだよ!おじいさんもマゼラン君のことを忘れていなかったんだね!マゼラン君は、 「おじいさん!いつまでも元気でね!」 ってさけんだんだ。おじいさんにペンギンの言葉はわからないはずだけれど、おじいさんは目をうるませたんだ!マゼラン君はしばらくのあいだ手を振ってるおじいさんを見つめていたんだけれど、急に海に潜ってその場から離れていったんだ。おいらはいつの間にか遠くまできちゃったから、南極へ帰るのがたいへんだったんだよ!
おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。食べ物は大切にね! |