『陸と海に林を作ったペンギン』

 

 おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。

 ある日、ヒゲペンギンのおじさんがおいらのところにきてくれたんだ。おじさんは一升ビンをかかえてた。

「アデリー君!いいこと教えてあげようか?なんとロイヤルペンギンさんが住んでいる島の海岸にはえてたコンブがなくなっちゃったんだって!!」

「えっ!!…ということは!えっへへへへへ…」

「そう!…というこはウニやアワビの食べほうだい!!」

「ロイヤルペンギンさんの島へ行こう!行こう!」

ってなことでおいらはおじさんとロイヤルペンギンさんのところへむかった。なんでおいらたちがコンブがなくなったことをよろこんでいるかっていうとね…。実は、ロイヤルペンギンさんはジャイアントコンブにまきついたり、その上に乗っかってねむるのが大好きなんだ。コンブはちょうどウォーターベットみたいなんだってさ。だからロイヤルペンギンさんにとってジャイアントコンブがなくなることはかなしいことなんだ。けれど、いつものことなんだけど、これまでに何度もコンブがなくなっちゃったことがあるんだよ。でもその時には必ず、海底にはサンゴモっていう灰色の藻が一面おおって、そしてウニやアワビがたっくさんとれるんだよ!それをおいらとおじさんでたらふく食べるんだ。これがホントにおいしくてね!ウニやアワビを食べつくして、しばらくするとまたジャイアントコンブが生えてくるんだ。たぶん、ウニやアワビがジャイアントコンブを食べちゃうんじゃないかな?だからおいらたちがウニやアワビをとって食べちゃうと、コンブを食べるものがいなくなるから、コンブはいせいよく生えてくるんじゃないかと思うんだ。つまり、おいらたちはジャイアントコンブを育てるために、ウニやアワビを食べなくちゃならないんだよ!

「ロイヤルペンギンさん!おじさんといっしょにウニやアワビを食べにきてあげたよ!!」

「食べにきてあげた…だって?ただウニやアワビを食べたいだけなんじゃないの?」

「そっ、そんなことないよ!ロイヤルペンギンさんだってジャイアントコンブがないとこまるんでしょ?」

「まあ、たしかにそりゃあそうだけど…コンブがなくなるとオキアミまでいなくなるからね!でも、この前みたいに食べすぎで”おなかがいたい” なんていいださないでおくれよ!まったく、食いしん坊なんだから…」

「うっ…それをいわれるとつらい。でもペンギンはみんな食いしん坊だよ!」

「アデリー君は特にねぇ」

 さっそくおいらとヒゲペンギンのおじさんは、海の中へもぐったんだ。でもぜんぜんウニやアワビを見つけることができなかったんだ。それになんだか海がにごっているような…。ついにあきらめて、おじさんとおいらは海からあがってロイヤルペンギンさんのところへもどった。

「おや、もうウニやアワビはとれたのかい?」

「ロイヤルペンギンさん!それがまったくいないんだよ…うっうっ…」

「なにい、いないだって!それにしてもアデリー君そのくらいのことで泣き出すこともないだろう?」

「だって、だっておいらすごく楽しみにしてたのに…」

「そういえば、海の水がいつもよりもにごっているような気がしたんだが…」

っておじさんがいったんだ。ロイヤルペンギンさんが、

「フム、三ヶ月ほど前にこの島で山火事があってなあ、林がやけてしまったんだよ。それで雨がふるたんびに土砂が海へ流されて、それでにごってるんだろう。それにこの前台風がやってきたばかりだしね!」

ってこたえたんだ。

「それじゃあ、ジャイアントコンブがいなくなったのはウニやアワビに食べられたんじゃなくて、土砂くずれで海がにごったせいかもしれん!となると、こりゃあ一大事だぞ!!」

「おじさん!どうすればウニやアワビを食べられるようになるの?」

「そうじゃなくて…なあアデリー君、まずは土砂くずれをせき止めなくてはならないよ。それには山火事でやけた場所に木を植えないと…」

「木を植えるの?それじゃあ、バオバブの木がいいよ!キガシラさんの森を作るときに植えたことがあるんだ。ケープペンギン君がバオバブの木の種をもってるから、おいら今からアフリカへいってくるよ!」

 おいらはケープペンギン君のところへむかったんだ。

「なあ、ヒゲペンギン君、アデリー君はなんであんなに一生懸命なんだ?」

「よっぽどウニやアワビを食べたかったんだろ!」

 

 おいらがアフリカへいく途中、ヨットに乗ったマゼラン君とすれちがった。

「やあ!アデリー君じゃないか…そんなに急いでどこへいくんだい?」

「マゼラン君、久しぶりだねェ。おいらこれからケープペンギン君のところへいくつもりなんだよ…」

そしておいらはマゼラン君にワケをすべてはなしたんだ。するとマゼラン君はヨットの奥から草を取りだして、

「これを植えるといいよ!ケナフっていうんだ。ここにいっぱいつんでるし、きっとこれのほうがバオバブの木よりも育ちがはやいと思うよ!」

っていってくれたんだ。マゼラン君のヨットに乗ってロイヤルペンギンさんの島にもどった。そして、ロイヤルペンギンさんとおじさんとマゼラン君とおいらは山火事でやけたところにケナフを植えたんだ。植え終わるとヒゲペンギンのおじさんが、

「一仕事終えたあとのこの一杯がたまらんねェ。まあまあ、アデリー君も少し落ち着いていっしょに飲もうじゃないか?」

ってさそったんだ。

「おじさん!おいらにお酒をすすめるのはやめてよ!」

「こんなにうまいものを飲みたくないなんて…それじゃあ、人生の半分もたのしんでないぞ!」

「っていうことは、おじさんは人生の半分以上をお酒でたのしんでいるの?」

「そういわれてみると、なんだかさみしくなっちゃうなあ…」

 

 みんなで植えたケナフはすぐに大きくなったよ。陸の上にケナフの林ができたんだ。それで土砂くずれがおさまったから、にごっていた海が透明になった。するとウニやアワビがあらわれるようになったんだ。おじさんはそれをさかなにお酒を飲んでた。おいらもウニやアワビをつかまえて食べたよ。ちょっともの足りなかったけれど。だって前に食べたときよりも小さかったからね!

 そうしてしばらくすると、海岸にいっぱいジャイアントコンブやほかの海草が生えてきた。海の中に海草の林ができたんだ。ロイヤルペンギンさんはまたジャイアントコンブのウォーターベットでお昼ねができるようになった、ってよろこんでた。

 

 おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。やっぱりウニやアワビってすごくおいしいよね!