ペンギン君、キミたちだってオキアミや小魚を食べるだろう?そのかわり、キミたちはサメやシャチに食べられちゃうことだってあるだろ。あの人間だって食う・食われるの目に見えない鎖で私らともつながってるんだよ。私らクジラが増えすぎちゃうと私らが食べるオキアミが減るだろ。そうするとそのオキアミが食べていたプランクトンはオキアミが減って食べられなくなるからそのプランクトンは増えるかもしれない… っていうように私らが増えすぎちゃうとほかの生き物にめいわくをかけちゃうんだよ。私らが浜に打ち上げられれば、もうオキアミや小魚を食べなくてよくなるし、私らの体は渡り鳥や陸の生き物たちのエサになることが出来るんだ。まさに一石二鳥じゃないか!これで世の中に最後の奉仕ができるし、これでいいんだよ。もう決まったことだし、私ら自分で決めたんだからさ…キミのさっき歌は天国へのいいおみやげになったよ!ホントにありがとう」 「死んでいいなんて…おいら絶対なっとくいかないよ!」 「この世の中なっとくいかないことなんて多いもんだよ。ペンギン君!あんたたちは気まぐれな人間どもにまどわされるんじゃないよ…それじゃあね!」 ってこの場を去って砂浜へむかっていくコククジラの一家を追いかけようとしたんだ。けれどナガスクジラがおいらの行く手をさえぎった。 「こんなのなにか絶対に間違ってるよ!ザトウ君!なんとかできないの?」 「オレにはどうすることも…おなじクジラの仲間として、明日は我が身かもしれないし…」 っていってザトウ君はなんともものがなしい歌を歌いはじめた。おいらは結局、コククジラの一家をただ見送ることしかできなかったよ。
おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。今度ばかりはおいらなんにもいうことができないよ…。 |