『木材を作ったペンギン』
おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。
ある時、ロイヤルペンギンさんが大あわてでやってきた。
「アデリー君!マカロニ君がダンプカーにひかれちゃったんだって!!人間が運転するダンプの下じきになっちゃったんだって!!」
「えっ!マカロニ君が?!!」
「すぐにマカロニ君はシュレーターペンギン先生のところにかつぎこまれたっていうから、今は病院にいるはずだよ」
おいらは大急ぎでロイヤルペンギンさんと病院へかけつけたんだ。病院の前でフンボルトさんが泣きわめいていた。
「あ〜あ!あたしのマカロニさん、死なないで!!」
「マカロニ君の具合、そんなに悪いの?」
っておいらは半狂乱のフンボルトさんにきいたんだ。
「どうしてあたしのマカロニさんがこんな目にあわなくちゃならないのよ!!もう、この世の終わりだわ!天変地異でも起こればいいのよ!!」
「フンボルトさん、そんなヤケおこしちゃいけないよ」
ってロイヤルペンギンさんがさとすようにいった。するとシュレーターペンギン先生が病院の中からでてきたんだ。
「まったく病院の外にだしてもうるさいんだから…命には別状ないっていってるのに…」
「マカロニ君は大丈夫なの?」
「そう、右足の骨折とうちみだけだから死にゃあせんってさっきからずっといってるのに、足もすぐによくなるっていってるのに、ホントにギャーギャーうるさいんだから…マカロニ君は今すやすやねむってるところなんだ。お願いだからフンボルトさん少し静かにしておくれよ!これじゃあ、助かるものも助からなくなるよ」
「助からなくなるなんて…やっぱりあたしのマカロニさんたいへんなことになってるんだわ!!」
「今のはものの例えで、絶対元通りよくなるから安心して…まったくずっとこんな調子なんだから、こっちの気がおかしくなってくるよ!」
「でもなんだってマカロニ君、ダンプが通るようなところへいったんだろうね?」
「あんた!あたしのマカロニさんに文句を付けるっていうの!」
「そっ、そうじゃないけど…」
「ああ、それはマカロニ君がねむる前に本人からきいたことなんだが、マカロニ君が住んでるホーン岬に人間たちが勝手にゴミ捨て場を作ったっていうことで、そこに燃えがらを捨てるようになったそうだ。その燃えがらには猛毒のダイオキシンが入ってるから、ゴミ捨て場のまわりで生活している生き物たちがそれにやられるといけないんで、燃えがらをたくさん運んでくるダンプの前に立ちはだかったっていうことなんだよ」
ってシュレーターペンギン先生が教えてくれたんだ。
「もう、人間たちには頭にきたわ!あたし、そのダンプに地雷でもしかけてやるんだから!!」
「フンボルトさん!そんなことやってもなんにもならないよ。とにかく人間たちが捨てる燃えがらをなんとかしないと…それにせっかくマカロニ君が自然を守ろうとしていたんだからさ!ねぇ、王様やみんなを集めてみんなで相談しようよ!」
っておいらがいうとフンボルトさんがいったんだ。
「あんたの頭って見かけとおんなじで中味も単純かと思ってたけど、かしこいこともいえるようにできてたのね!」
「それどういう意味?ほめてるの?けなしてるの?」
ペンギンみんなが病院前の広場に集まった。
「その燃えがらをガラパゴス博士のお花を寒さに強くする機械に入れればいいんじゃないのか?」
って王様がいったんだ。
「王様、もっといい機械がありますよ!それは燃えがらに入ってるダイオキシンをリグニンにもどす機械なんですよ。猛毒のダイオキシンっていうのはリグニンを燃やすと出来るんです。リグニンはふつうの植物に入ってるものだから当然無害なんですよ!そしてここからがすごいとこなんだが、ふつうのどこにでもある紙を水にふやけさせたものの中にリグニンを入れると寒天みたいにかたまるんです。いや、寒天よりもずっとかたくなってなんと木材になるんです!だから、かたわくに紙をふやけさせたものを流しこんでリグニンを加えるといろんなかたちの木材が出来るってワケですよ!どうかね、ロイヤルペンギン君、今度作る飛行船の材料に使ってみては?」
「博士!それは飛行船の骨格に使えそうです」
「ボクがこれから作ろうとしているグライダーにも使いたいんですが…」
ってイワトビ君がきいた。
「もちろんかまわんよ。ホントはこの自然の中にはゴミなんてものはないはずなんだ。おそらく地球上でゴミをだすのは人間くらいなもんだろう。すべてのものは色々なかたちに姿を変えても自然のわっかをぐるぐるめぐりめぐってるだけなんだ。ただ、一周するのに速いかおそいかのちがいがあるだけなんだよ。けれど人間が自然のわっかから外れたものを作り出してしまうから話しがややこしくなるんだ。だから、その外れたものを自然のわっかにもどしてやればいいってことになるんだが…人間ってホントに和を乱すんだから…」
ガラパゴス博士がイザベラ島からホーン岬のゴミ捨て場にダイオキシンをリグニンにもどす機械を持ってきた。機械に燃えがらを入れてリグニンを取り出したんだ。紙を水にふやけさせたものにリグニンを入れてロイヤルペンギンさんは新しい飛行船Z−15号の骨格を木材で作った。イワトビ君はグライダーのラングレー号の翼の骨組みや胴体を作ったんだ。そうしてゴミ捨て場の燃えがらに入ってるダイオキシンを全部リグニンにしたんだよ。
マカロニ君はホーン岬のゴミ捨て場がなくなったってきいてすごく喜んだんだ。今ではマカロニ君、松葉づえをついてだけど外を歩けるようになったんだ。でもずっとフンボルトさんがべったり。マカロニ君、ちゃんと足がなおるまで逃げられないんだろうな!リハビリもたいへんそうだし…一難去ってまた一難だね!けど、おいらはなんだかフンボルトさんのことをちょっぴりだけど応援したくなっちゃったな。だってフンボルトさん、マカロニ君のことをずっとねないで看病してたからね!
おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。自然の中にはゴミなんてものはないんだってさ!!