「いや、いや、とんでもない!」 「あいつはいい弟分だよっていいたいんでしょ?」 ってフンボルトさんがきいたんですよ。ちょっとためらってから、 「フム…僕らの間ではね、深層循環をめぐると箔がつくんだ。なかなか成功しないからね。途中であきらめちゃうことが多いんだよ。僕の大将なんか今まで三度も回った。僕も何回か挑戦したことがあるけれど、まだ成功したことがないんだ。昨日は深層循環の演習にいってきたのさ。なんていったって、深層循環は一度はじめたら成功するのに二千年もかかるんだから…。僕だって今度こそは!…今日の僕は忙しいんだった。今日もこれから演習にいかなきゃならない、それじゃあ!」 っていうと又次郎さんはそそくさと海に消えていったんです。 次の日。 又次郎さんはあの浜辺にこなかったんです。私めは一羽でフィリップス島の浜辺でたたずんでいると、どこからともなく、 「コガタペンギン君、さよなら!!」 って波野又次郎さんの声がきこえてきたんですよ。私めはとっさに、 「又次郎さん!さよなら!!」 って叫んだんです。きっとそれから又次郎さんは深層循環の旅に出るためにグリーンランド沖にむかったと思うんです。 私めはコガタペンギンです。フィリップス島に住んでいます。二千年後かあ!私めは生きていませんよね。又次郎さんのおはなしをもうきけないのかな?又次郎さん、今度こそ深層循環の旅が成功するといいですね! |