『待つことにしたペンギン』
おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。
ある日おいらはガラパゴス博士のところに遊びにいったんだ。博士はきみょうな猟銃みたいなものをかまえていたんだ。
「博士!こんにちは」
「やあ、アデリー君」
「なにしてるの?そんなぶっそうなもの持ってさあ!」
「ああ、これかい、これは私が発明した電子銃だよ。こいつで加速した電子を放射能を持つものにぶつけてやると、放射能を取り除くことができるんだ。加速した電子自体、放射線とみなすことができるから、“毒をもって毒を制す”みたいなものだな。だから放射能を持っていないふつうのものに加速した電子をぶつけてしまうと、ぶつけられたものはものによっては放射能を持ってしまうんだ。それにこの電子銃を生き物にむけて撃つと、撃たれた生き物は死んでしまうかもしれないんだ!だから取り扱いには注意しないといけないな」
「放射能?放射線ってあびると死んじゃうヤツ?」
「まあ、多量の放射線を一気にあびると死んでしまうこともあるけれど、われわれ地球上で生きているものは必ず自然の放射線をいつもあびているんだよ。ほら、そこにガイガーカウンターっていう放射線を見つける機械があるだろう…それのスイッチを入れてみてごらん」
おいらは博士のいうとおりガイガーカウンターのスイッチを“オン”にしてみた。するとその機械から時おりピコ・ピコ音が鳴りだした。
「ピコピコ音がしたときが放射線を検出したってことだよ。今検出しているのが天然の放射線だ。今よりも大量の放射線を検出すると、ピコピコなる回数がふえるわけだ」
「へ〜え、ふつうにしていても放射線をあびているんだね」
「そのとおり、地球が出来上がってから45億年間、地球上にはたえず放射線がとびかっているんだ。それは宇宙から来るものや地面から地球から出てくるもの、さまざまだけれど、その地球上で生命は誕生し今の今まで生きてきたんだ。おそらくこれから先もそれはかわらないだろう。だから地球の生き物には自然の放射線は必要なものかもしれないな」
「ところで博士はさっき放射能を取り除く銃を発明したっていってたよねェ…今博士が持っている銃のことだけど…自然の放射線をそれでなくしても意味ないんじゃないの?だっておいらたち地球の生き物には放射線が必要なんでしょう?」
「自然の放射線は生物にとって必要だが、人間たちが作った核ミサイルは別だよ!しかも核ミサイルが海底に沈んでるんだから…」
「核ミサイルが海に沈んでるの?!」
「ああ、世界中の海底にはたくさんの核ミサイルが沈んでるんだ!」
「どうして人間はそんなあぶないことをするんだろうね!」
「人間がやることにいちいちどうして?なんて理由を考えていたらこっちの気がおかしくなってくるよ。なんてったって人間はひとつしかない地球を何回も破滅させるほどの核ミサイルを作ったんだから…ほかの生き物の事なんかまったく眼中にないんだからイヤになっちゃうよ!しょせん、われわれペンギンには人間様のやることなんか理解できないものなのさ!ところでアデリー君、明日、海に沈んでいる核ミサイルの放射能をこの電子銃で取り去ろうと思うのだが、ちょっと手伝ってくれないか?」
「核ミサイルにそばにいっても大丈夫なの?あぶなくないの?」
「危険は危険だが、この放射線をさえぎる服を着ていれば大丈夫だし、もしも核ミサイルが爆発するようなら地球上どこにいてもあぶないよ」
ってガラパゴス博士はゴツイ服をさし出してくれた。
「ふ〜ん…それならいいよ」
っていうことでおいらは博士の手伝いをすることになったんだ。
とりあえずその日は博士のところから南極へ帰ることにしたんだ。帰り道、おいらはザトウクジラに出会った。
「やあ!ペンギン君じゃないか…なんか面白いことはないか〜い?ラララ♯」
「ザトウ君、面白いことじゃないけど…」
っておいらはザトウ君に明日、ガラパゴス博士といっしょに電子銃を使って海底にある核ミサイルの放射能を取り去る予定だってことをしゃべったんだ。
「へーえっ!ペンギン君はすごいことをするんだネ♯。でも…そ〜んなことしてあぶなくはないの?♭」
「少しはあぶないけど、ずっと核ミサイルをほうっておくわけにもいかないでしょう?」
「フ〜ム、それもそうだね♪。ら〜りら、ところでキミたちが明日いくところだけど…あの辺りは巨大イカのクラ―ケンがうろついている場所だよ♭」
「巨大イカ?クラーケンとやらはどのくらい大きいの?」
「マッコウクジラのおやじさんとじゃれあうくらいだから、ペンギン君から見たらおそろしいくらいだと思うよ!そうだよ!そうだよ!きっとそうだよ♯」
「へえー。そんなに大きいの!イカそうめんにしたら何人前になるんだろうね」
「相変わらずキミは食べることばっかり考えてるんだね〜♪。クラーケンに出くわしてもそっとしておいてくれないか♭…マッコウクジラのおやじさん、この前奥さんに先立たれたばかりで今じゃ海底にもぐってクラーケンとじゃれあうことだけが楽しみなんだよ♪。クラーケンがいなくなるとマッコウクジラのおやじさんすごく悲しむだろうから…クラーケンだってそんなに悪いヤツじゃないし、それに、クラーケンのイカそうめんなんて大味でちっともおいしくないと思うよ♯」
「いつも威勢のいいマッコウクジラのおやじさんが悲しむ…か」
「そうなんだ。クラーケンのこと、ひとつたのむよ!ら・ら・ら♯」
「うん,わかった。クラーケンにあってもそっとしておくよ」
次の日…。
おいらはガラパゴス博士といっしょに放射線をさえぎる服をきて、電子銃とガイガーカウンターとをもって核ミサイルが沈んでいるっていう海底へむかったんだよ。
「このあたりのはずなんだが…核ミサイルをガイガーカウンターでさがしてみようか?」
って博士はガイガーカウンターのスイッチを入れたんだ。ガイガーカウンターはピコピコ鳴りだした。そしてとある地点にたどり着くとガイガーカウンターは“ビーッ”ってオーバーヒートしそうなくらい鳴りだしたんだ!
「ここにミサイルがうまってるな!」
って博士は海底の土を少しはらいのけた。すると核ミサイルの頭が姿をあらわした。
「いくら放射線をさえぎる服をきているといっても、こうしているのも気持ちのいいもんじゃないな。さっそく放射能をこの銃で取り去ろう」
って博士は核ミサイルから少しはなれると、それにむけて電子銃を撃ったんだ。加速した電子は見事ミサイルに命中したよ!さっきまでガイガーカウンターは核ミサイルの放射能で”ビーッ“って苦しそうに鳴ってたのに、ピコピコにもどった。そう、核ミサイルの放射能がなくなったんだ。
「よし、大成功だ!次の核ミサイルをさがそうか?」
って博士がいっていると、そのうしろから巨大なイカのかげがあらわれた。クラーケンだった。ガラパゴス博士はびっくりしてもっていた電子銃でクラーケンを撃とうとした。おいらは、
「撃っちゃダメ!」
って博士とクラーケンの間にわって入った。でも、あわててた博士はクラーケンにむけて電子銃を撃っちゃったんだ。それがおいらに当たって.気をうしなっちゃった!
気がつくとおいらはシュレーターペンギン先生の病院にいたんだ。
「アデリー君、やっと気がついたかい…大丈夫かい?」
って博士が声をかけたくれた。
「アデリー君、ホントにすまなかった!クラーケンのことはあとからクジラたちにきいたよ」
「それにしてもムチャなことするよなあ!クラーケンのたてになって加速した電子に自ら当たるなんて!放射線をさえぎる服を着ていなけりゃあ死んでいたぞ!!」
ってシュレーターペンギン先生がいったんだ。
「クラーケンは大丈夫なんだね」
おいらは博士にきいたんだ。
「ああ、ぴんぴんしてると思うよ。クラーケンはただ私たちがなにをしているのか?ちょっと見にきただけらしい。私はてっきり化け物がおそってきたのかとばかり思ったんだ。アデリー君ホントにすまなかった。電子銃なんか発明しなければよかったんだ。放射線とか原子力なんてものは平和的に利用していれば問題ないはずなんだけれど、絶対に平和なんてことがありえるのか?どうか?…電子銃はバラバラにしてお花を寒さに強くする機械へ入れちゃったよ。ほら、このお花はそれで寒さに強くしたんだよ。キミのお花畑に植えてくれないか?」
「博士はぜんぜん悪くなんかないよ!けど、核ミサイルはどうするの?まだたくさんのミサイルが世界中の海に沈んでるんでしょ?」
「まあ、そのことなんだが…ほかの核ミサイルは人間たちが後始末をつけるまでしばらくの間待つことにしたよ。なんってったて人間たちがミサイルを作ったんだから…」
「その方がいいかもしれないね」
おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。核ミサイルの後始末はキミたちにまかせたよ!