『噴火を電気にかえたペンギン』
ボクはマカロニペンギン。ホーン岬に住んでいる。
今回は友達のアデリー君にかわってボクがお話しするね!
この前、ペンギンみんなで占い師のスネアーズペンギンじいさんがいるスネアーズ島に出かけたんだ。スネアーズ島は絶海の孤島だから行くのがたいへんだった。みんな何とか海をわたってスネアーズ島に行きついた。そこでみんなそれぞれスネアーズじいさんに、今年の運勢を占ってもらったんだよ。まずはじめに王様が占ってもらってた。
「王様!今年の運勢は中吉じゃ!」
「中吉か、まあまあだな。ありがとう!スネアーズじいさん!」
「次はあたしよ!レディーファーストっていうでしょ」
フンボルトさんがしゃしゃり出た。
「フンボルトさん、あなたは小吉!」
「小吉か〜あ。よろこんでいいのか?どうなのか?…あっ、あたしのマカロニさん!次はあなたが占ってもらいなさいよ!」
ってフンボルトさんにいわれたから、仕方なくそうしたよ。
「マカロニ君!キミもフンボルトさんと同じ小吉じゃ」
「キャー!マカロニさんがあたしとおんなじ小吉だなんて!やっぱりあたしたち気が合うのね!今年こそとうとうマカロニさんのお嫁さんになっちゃうかも…」
「そっ、それは絶対ないと思うよ」
「えっ?どうして…」
その次はイワトビ君の番で、大吉だったんだ。イワトビ君は跳びはねてよろこんだんだよ!イワトビ君はスネアーズじいさんに、
「大吉がでて景気がついたところで、ついでに旅に出ててここに来れないマゼラン君の運勢をこのヨットの帆で占ってほしいんですが…」
って、白い布を差し出したんだ。
「マゼラン君の運勢は末吉じゃ」
「それじゃあ、宝物は見つけられるの?」
「年末まではムリじゃろう!!…いや、やっぱり今年はムリだと…」
「なんだかマゼラン君かわいそうだな!マゼラン君の旅もまだまだつづきそうだねえ」
ガラパゴス博士とシュレーターペンギン先生は吉だった。
そしてアデリー君が占ってもらう番がまわってきた。
「アデリー君!キミの今年の運勢はなんと大凶とでておる!!」
「え〜えっ どうして大凶なの?今年、おいらになにがおこるの?」
「7の月に南極のエレバス山が大噴火する…今のうちに逃げた方がいいぞ!!」
「エレバス山が大噴火!!せっかくみんなで作ったおいらのお花畑も住みなれた場所も全部ダメになっちゃうの?」
「残念ながら…」
「7月に噴火して、それからどれくらい噴火してるの?」
「100年くらいは…」
ってスネアーズじいさんが告げると、アデリー君はくちばしからアワをふいて気絶しちゃったんだ。しばらくしてアデリー君は気をとりもどした。
「おいらはいったいどうしちゃったの?」
「スネアーズじいさんからエレバス山が大噴火するってきいて気絶しちゃったんだよ」
「そうか!エレバス山が噴火するなんて…おいらのお花畑がダメになっちゃうなんて…」
そうアデリー君がつぶやいていると、ガラパゴス博士が、
「悪いことばかりでもないよ!7月にエレバス山が噴火することがわかっているのなら、噴火のエネルギーを電気にかえることができる。電気を作る方法はいろいろあるけれど、ジェットエンジンを使うやり方があるんだよ。それを応用して、火山の噴火をジェットエンジンに見立てて発電するんだよ。わたしはこの前、その機械を発明したんだよ」
「別にそんことまでして電気を作らなくてもいいんじゃないの?火山が噴火するんだよ!火山灰がふってきて火山弾が飛んできて、それから溶岩が流れてくるかもしれないんだよ。あぶないんじゃないの?」
「それを全部、電気に変えるんじゃないか!それに、今、使っている石油はあと数十年でなくなるんだよ!石油がなくなったら電気も作れなくなっちゃう。ここら辺りで、石油以外から電気を作ることを考えないとたいへんなことになるよ!!エレバス山の噴火は100年間つづくっていうから、これからそれで100年間は電気を作れるっていうことになるよ!」
「ふ〜ん、でもその機械で電気を作ったところで、噴火をおさえることはできないんでしょ?」
「いや、そうでもないんだな!計算どおりにいけば、噴火の煙や熔岩をすべて機械に送りこむことになるから、噴火が起きてもかるい地震があるくらいでほかは何にも心配はいらなくなるよ!」
「じゃあ、おいらのお花畑は大丈夫なの?」
「ああ、火山灰や熔岩を全部機械に送りこめればね…ただ、この前作った機械はテスト用で小さいから、大きなものに作りかえないと…噴火は7月でまだだいぶ先だからそれまでにはきっと間に合うだろう。だが、今年の運勢が吉だからなあ〜」
っていって、博士はスネアーズじいさんを見つめた。
「おお!ガラパゴス博士!!あなたの運勢は今大吉にかわったよ!それからアデリー君!キミの運勢も小吉に上がったぞ!!」
「スネアーズじいさん!ペンギンの運勢ってそんなにコロコロ変わっちゃうものなの?」
さっそく、ガラパゴス博士がエレバス山の火口に合わせた電気を作る機械を山のふもとに作ったんだ。
「あとは噴火口からここまで噴火のエネルギーをみちびくためのパイプを取り付けるだけだな。でもどうやって、山のてっぺんまでパイプを引っぱっていこうかな?」
「それなら飛行船を使えば…ロイヤルペンギンさんがものすごく大きな飛行船を作ったっていう話しがあるんだよ。おいらがそれをかりてくるよ」
アデリー君はロイヤルペンギンさんのところへいったんだ。
「ねえ!ロイヤルペンギンさん!!ものすごく大きい飛行船を作ったってホント?」
「ああ、大きいヤツを作ったよ!Z−10号っていうのをな。Z−10号は前のZ−1号の10倍の大きさなんだ。そのほかにZ−1号の7倍の大きさのZ−7号や3倍のZ−3号っていうのもあるよ」
「いつの間にそんなにたくさん作ったの?」
「なんというか…そのしゅみみたいなもので…」
「Z−10号をおいらにかしてほしいんだ」
「いいとも、ところでなにに使うんだい?」
アデリー君とロイヤルペンギンさんはZ−10号に乗って、エレバス山のふもとにやってきた。電気を作る機械のつながっているジャバラのようなペコペコしたパイプのはしをZ−10号に取り付けて、パイプを引っぱりながらのばして山の頂上へまい上がっていった。パイプの先を火口にすっぽりかぶせたんだよ。これで火口と博士の機械は一本のパイプでつながったんだ。
問題の7月がやってきた。みんなエレバス山のふもとに集まった。でも20日過ぎまでなにも起こらなかった。みんなだんだんエレバス山が噴火してほしいやら、してほしくないやら、ふくざつな気持ちになってきた。25日の午後3時をちょっとまわったころ、地震があったんだ。ゆれは大したことはなかったけれど、山の頂の方からゴオーッってなりだした。エレバス山が噴火したんだ!!火口にすっぽりかぶせたパイプのまわりから少し煙がもれて、噴火のエネルギーがパイプを伝って機械に流れ込んだ。すると急に電気を作る機械が動きはじめたんだ。機械につながっている電球が光りだした。
「ほう!計算どおり機械が動いてるぞ!成功だ!!」
ってガラパゴス博士がさけんだ。これをきいたアデリー君は、
「博士!ありがとう!!みんなもありがとう!みんなのおかげでおいらのお花畑も住みなれたところも無事です!!」
って目をまっ赤にしてた。よかったね!アデリー君!!
ボクはマカロニペンギン。ホーン岬に住んでいる。キミたち人間もボクらみたいに電気を作るようにすればエネルギー問題も解決するんじゃないの?