『ホタルを呼んだペンギン』

 

 おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。

 ある日、マカロニ君がおいらのところにやってきた。

「アデリー君!ビクトリア先生がビオトープを作るんだってさ。いっしょに手伝いにいこうよ!」

「ビオトープ?それってなんだい?」

「ビオトープっていうのは、人間たちが荒らしていった土地に自然をとりもどすために作る公園みたいなものだよ」

「おもしろそうだね!そういえばビクトリア先生が住んでる森も人間たちが切り開いちゃったんだよね」

 てなことでおいらはマカロニ君とビクトリア先生のところへいったんだ。

 ビクトリア先生はジェンツー君やハネジロちゃんといっしょにクワで土を掘り返しているところだった。

「こんにちは!ビクトリア先生」

「あら、マカロニ君にアデリー君!久しぶりねぇ。もしかして手伝いにきてくれたの?」

「うん、そうだよ!ところで今なにをしているんですか?」

「小川を作ろうと思っているのよ。ここでホタルを飼おうっていう計画なの。人間たちがここにやってくる前にはね、ここら辺にはもともとホタルがたくさんいたの」

「ホタルってぴかぴか光るヤツ?ここにホタルが舞ったらさぞきれいだろうね!」

 さっそくおいらたちは小川を作るのを手伝ったんだ。浅いみぞを掘って、ところどころに小石をしきつめた。中州も作った。小川の水は近くを流れる川から取ることにしたんだ。ジェンツー君が一羽で小川になる浅いみぞの上流にせっせと木炭をおいていたんだ。

「先生!ジェンツー君はなにをしているの?」

っておいらはビクトリア先生にきいたんだ。

「あっ…あれは先生がたのんでおいたの。ここを流れる水はむこうの川から引こうと思っているんだけれど、あの川は時々アワだらけになっちゃうことがあるの」

「先生!ホタルっていうのはきれいな水のところでしか育たないんじゃないんですか?」

ってマカロニ君がきいた。

「そう。ホタルの幼虫はアワぶくだらけの水の中じゃすぐに死んじゃうし、その幼虫が食べるカワニナっていう小さな貝も育ってくれないの…ホタルって幼虫の時には、きれいな水の中に住んでて、カワニナをたくさん食べるのよ。だから、木炭でむこうの川の水をきれいにしてここに流したいの」

「木炭ってアワをとってくれるんですか?」

「そうなの。水のよごれをとってくれるのよ!それにヨシっていう植物も植えようと思うの。ヨシも川の水をきれいにしてくれるからね!」

「ホタルの幼虫ってカワニナを食べるのか…それじゃあ、このかわにはカワニナでいっぱいにしなくちゃならないんだね…なあんてね、エヘヘヘ…シャレいっちゃった!」

「フッフフフ…」

っていつのまにかおいらのうしろでジェンツー君がわらってたんだ。

「フフフ…アデリー君!今のキミのダジャレはボクへの挑戦状とみなすよ。このボクにダジャレで対抗しようとはいい度胸だ!!ボクだってその気になれば今のキミのありふれたダジャレくらいいくらでも思いつくんだ!!ただちかごろ、ダジャレのライバルがいないんでちょっと気がゆるんでいただけなんだ!!あの程度のダジャレで勝った気になるなよ!そうだ!これからアデリー君!キミのことをダジャレのライバルって呼ばせてもらうよ!いいね!ダジャレのライバル君!」

「ライバルってジェンツー君…おいら、そんなのイヤだよ!」

「あ〜あ、ボクも見下げられたもんだなあ!ボクはキミのライバルにもなれないっていうのかい?」

「そっ、そんな意味じゃなくて…もっと仲良くしようよ!」

「こんなので仲良くできるか!覚えていろよ!」

ってすてぜりふをはいてジェンツー君は去っていったんだ。なんだかおかしなことになっちゃったな。

 みんなで掘った浅いみぞにヨシを植えて、水門をあけたんだ。みぞにゆっくり水が流れだしてきれいな小川になった。木炭やヨシが川の水をきれいにしてくれたんだね!それからおいらたちは小さい池や湿地を作ったり、まわりの草原に木を植えたりしたんだ。

 そして、ついにビオトープが完成したんだ。

 

 夏がめぐってきた。夜、暗やみにちらちらホタルが舞いだしたんだよ。何ともこれがきれいでね。ビクトリア先生はすごくよろこんで、ハネジロちゃんとマカロニ君、それにおいらでそれをうっとりながめたんだ。そこへジェンツー君やってきた。

「やあ、ダジャレのライバル君!知ってるかい?ビオトープっていうのはホタルの宿屋なんだってさ!ホタルの宿だけにホタルのホテェィル、ホタルのホテル…フン、今回はすなおに負けをみとめてやるよ!キミと出会ってからというものダジャレのキレが悪くなっちゃって…次はすごいヤツを用意するから覚悟しとけよ!」

ってジェンツー君は一方的にしゃべりたててやみのなかにきえていった。そしてペンギンみんながビオトープに集まったんだよ!フンボルトさんもやってきた。フンボルトさんはマカロニ君のとなりにきて、

「あたしのマカロニさん!あたし、いいこと思いついたの!」

っていったんだ。みんなイヤな予感がした。

「将来、あたしたちの結婚式をここで挙げましょうよ!こんなにきれいなところほかにはないわ!ホタルの舞うなかみんなに祝福されて…ああ、なんだかその気になってきちゃったわ!今からその時のために式のリハーサルをしましょ!さあ、みんなも協力してちょうだい!!」

「そんなボクはまだ結婚なんて考えたこと…だっ、だれか〜たすけてくれ〜い!!」

ってさけんでマカロニ君はフンボルトさんに強引に引っぱられてやみのなかに消えていったんだ。おいらに『ビオトープを作るのをいっしょに手伝おうよ』ってさそってくれた時には、こんなことになるなんて思ってもみなかったんだろうな!とうとうマカロニ君も観念したのかなあ?

 

 おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。キミたちもビオトープを作ってみたら?ホタルってすごくきれいだよ!