電化製品のなげき

 

 ある時、冷蔵庫が洗濯機に話しかけました。

 「洗濯機さん!あなたこの前ガタガタいって途中で止まっちゃったけれど大丈夫?もうそろそろ買いかえられちゃうんじゃない?」

 「そんなことないわ?私はまだまだ平気よ!」

 「でも、今じゃあ洗濯機は全自動が当たり前なのにあなたは二槽式じゃない。ここの奥さんは新しもの好きなのよ」

 「二槽式の方がきれいに洗えるの」

 「そんなのあなただけの幻想よ!」

 「とにかく私はまだまだ平気。冷蔵庫さん、あなたこそ買いかえらるんじゃあ…だっておととい奥さんが言ってたわよ『この冷蔵庫もだいぶ古くなってきたわ。新しいのにしようかしら。省エネにもなるしね』ってね」

 「あらイヤだ。私だって若い頃は”省エネタイプ”って言われてたのに…5年や10年でそう簡単に買いかえられたんじゃ、それでエネルギーを使っちゃうのにね!」

 「5年も10年ももてばまだいい方よ。パソコンさんなんてわずか半年で古くなったなんて言われているのよ!」

 「いや、3ヶ月だよ」

と、冷蔵庫と洗濯機がしゃべっているところにパソコンが言いました。

 「おいら自身はそんなに古くなったとは思わないんだけれど…」

 「ところでパソコンさん、あなたはいったい何ができるの?私は冷蔵庫だからものを冷やせるし、洗濯機さんは洗濯ができる」

 「おいらはいろんなことができるよ」

 「いろんなことって、たとえば?」

 「おいらはパソコンだよ!まず、計算ができる」

 「計算なんて、電卓さんの方が簡単にできるわよ」

 「それじゃあゲームができる」

 「ゲームならゲーム機さんの方が得意なんじゃない?」

 「ワープロ」

 「ワープロ?それならワープロさんの方が専門よ!」

 「絵が描ける」

 「絵なんて紙に描けばいいじゃない」

 「インターネットや電子メールを使って遠くの人と話ができる!」

 「遠くの人とお話しするんだったら、インターネットなんてややこしいもの使わないで電話でできるわ!」

 「インターネットと電話はちがうんだ!」

 「そうなの?私にはわからないわ。でも、ケータイ電話にはインターネットができるものもあるんでしょ?」

 「えっ?」

 「そのほかには?」

 「うっ…」

 「でも、あなたはなんだかんだ言っても使ってもらえるかかいいわよね。扇風機さんを知ってる?」

 「そう言えば最近見ないわね」

 「そうよ。だってクーラーさんがやってきてから一回しか働いていないんだって。ずっと、納戸の奥にしまわれてるって話よ」

 「それにしても昔の電化製品はよかったわよねえ。大きなのっぽの古時計なんておじいさんが生まれたと同時にやってきて、おじいさんが亡くなったときに止まって、ありがたがられるなんて…」

 「大きなのっぽの古時計は電気仕掛けじゃないかもよ!」

 「えっ、そうなの?」

 ……電化製品たちのなげきはまだまだつづきます。