『地球を飛びだしたペンギン』

 

 おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。

 ある日、おいらたちペンギンはみんな王様のところに集まって、会議を開いたんだ。

「みんなに集まってもらったのはほかでもない。ついにコウテイペンギン君がM−777星団へ行くことができる宇宙船を完成させた。M−777星団には伝説のペンギン・ジャイアントペンギンがおられる。これから地球をすてて、ジャイアントペンギンさんのところへ行こうと思う。地球は人間たちのせいでペンギンにとってどんどん住みにくくなっている。このまま地球にいたら、近いうちにみんなほろんでしまう。そうなってしまう前にM−777星団へみんなで行こう!」

って王様がいったんだ。

「王様!ジャイアントペンギンさんはちゃんとそこにいるの?」

ってフンボルトさんが質問した。ガラパゴス博士が、

「フンボルトや!今では”伝説”ということになってはいるが、ジャイアントペンギンさんはM−777星団で生きつづけているんだ。大昔の地球にはコウテイペンギンさんの2倍の背丈のジャイアントペンギンさんがいたんだ。けれどある時、急にエサのオキアミが海から消えてしまったんだ。そこで仕方なく、光ロケットで地球を出て宇宙を旅したんだそうだ。そうして、オキアミがいっぱいいるM−777星団を見つけて、そこに住みつづけている。M−777星団はペンギンにとってまさに楽園・理想郷なんだそうだ」

って説明した。

「博士のいうとおり、M−777星団はパラダイスだといううわさだ!それにM−777星団はあそこに輝いている!伝説やうわさはともかく、そこへ行く価値はあると思う」

って王様がフリッパーでM−777星団を指しながらいったんだ。

「あたしはどうしようかな…?」

ってフンボルトさんが迷っているから、

「おいらは絶対行くよ!M−777星団に永住するんだ!だって地球は自分勝手な人間たちにこわされていく一方でしょう?それに、モアやエミューみたいにほろぼされたくないもの…」

っていったら、つづけてマカロニ君が、

「ボクもM−777星団へ行くよ!もしもそこがパラダイスじゃなかったら、また地球に帰ってくればいいだけじゃないか!」

っていったんだよ。するとフンボルトさんがいったんだ。

「あたしのマカロニさんがそういうのならまちがいないわよね!あたしもおともするわ」

てなことでみんなそろってM−777星団へ行くことになった。

 みんなコウテイペンギンさんが作った宇宙船・エンペラーシャトル号に乗り込んだ。そしてM−777星団に向かって出発!地球から離れていくとき、コガタペンギン君が後ろの窓をのぞきながら、

「あっ!青い地球がどんどん小さくなっていく…」

ってさけんだんだ。みんな地球が点になるまで後ろの窓にくぎ付けになった。

 

 M−777星団に行き着いた。でも、M−777星団にはたくさんの星があってね…しばらく、ジャイアントペンギンさんをあっちこっち探しまわったんだ。いくつかの星をめぐって、やっとジャイアントペンギンさんを見つけたんだ!ジャイアントペンギンさんはちょうどお昼寝をしているところだった。ガーガーいびきをかいててね。おいらたちは宇宙船からおりて、横になっているジャイアントペンギンさんに近よったんだ。ジャイアントペンギンさんはあいかわらずねむってた。どうしたものか?ってみんな考えていると、とつぜんフンボルトさんがジャイアントペンギンさんのほっぺたをつっついた。

「ムニャ、ムニャ…虫のヤツ、また昼寝をじゃましにきたな!」

ってジャイアントペンギンさんは自分のフリッパーで顔をはらいながら目を覚まして起きあがった。ジャイアントペンギンさんはホントに大きくてね、おいらより大きいコウテイペンギンさんよりもはるかに大きいんだ。

「おや!ここにはワシ以外にペンギンはおらんはずなのに!」

ってフンボルトさんを見てびっくりしたんだ。

「ジャイアントペンギンさん?あたしたちは地球からきたの」

「地球のワシの子孫たちかい?こりゃあ大勢でよくきたねえ!地球の様子はどうだい?それにしてもなんで急に…地球がどうかしたのかい?」

ってジャイアントペンギンさんがやさしくきいたんだ。

「地球は今のところ何ともありませんが、ただ人間たちが次々地球をこわしていくんです。私たちはモアやエミューのようにほろびたくなかったものですから、地球をすててここにやってきたのです。ここはペンギンにとってパラダイスだと聞いていたので…」

って王様がこたえたんだ。

「ということは、地球はまだ大丈夫なんだろ?なら、地球にいた方がいいぞ!!」

ってジャイアントペンギンさんがいったんだ。

「人間たちはその昔、私たちを釜ゆでにしていたこともあるし、じかにペンギンを殺さなくたって、ビクトリア先生やキガシラさん、ケープペンギン君が住んでる森を勝手に切り開いちゃって…住んでいる森がなくなちゃったために、ちょこまかしたバンデクートさんの中には全滅しちゃったものがいるんですよ!」

ってマカロニ君がうったえた。

「ペンギンを釜ゆでにしただって?それは昔の話だろう。人間だって最近ではキミたちと仲良くしようとしてるんじゃないのかな?ねェ、コガタペンギン君?」

ってジャイアントペンギンさんがコガタペンギン君にたずねた。

「はい、ちかごろ人間たちは、私めが海からあがって浜辺を歩いているところを大勢でじっと見ているんですよ!はじめは気持ち悪かったけれど、ただ見ているだけで何もしないからあんまり気にしなくなっています」

ってこたえたんだ。

「やっと人間たちはキミたちのことをほうっておくことが一番いいんだって気がつきはじめたんだよ」

「人間たちは自分自身が住んでいるのに地球をどんどんこわすんですが…」

ってシュレーターペンギン先生がいいかけると、

「ヤツらだってまるっきりのバカじゃないから、そんなことはもうやめると思うよ。お前たちがホントに危なくなったらワシが光ロケットでむかえに行くから」

ってジャイアントペンギンさんがいったんだ。

「ここはペンギンのパラダイスなんでしょ?」

ってハネジロちゃんがきいた。

「ペンギンのパラダイスか…そう、ここにはこまった人間もいないかわりに何もない!ただ空と海と大地があるだけ。ひょっとしたら大昔の地球のすがたがここにはあるのかもしれないな。動物はこの星にもともといたオキアミとワシが光ロケットでやってくるときに地球でロケットにまい込んでしまった虫だけだ!」

「向こうに森があったみたいだけれど…」

ってケープペンギン君がきいた。

「あれはワシが地球からもってきた植物の種をまいて、森にしたんだ」

ジャイアントペンギンさんがこたえて、

「地球にいられたらその方がいい!地球にはこことくらべものにならないほど美しい自然がある。ここはまだまだこれからの星だ。ホントはワシもここにいちゃいけないのかもしれないなあ。お前たちを見たらワシも地球へ帰りたくなったよ!」

って目をうるませていったんだ。

「そうだね!地球にはアホウドリ君やオオトウゾクカモメさん、ザトウクジラ君やほかの動物の仲間たちがいっぱいいるもんね!それにやっぱり地球さんをかんたんにすてるなんてわけにはいかないよね!おいら、なんだか地球がこいしくなってきちゃった」

「あたしたちといっしょに帰りましょうよ」

ってフンボルトさんがさそったんだ。だけどジャイアントペンギンさんは、

「ワシもキミたちといっしょに地球へ戻りたいのはやまやまだ。でもワシのようなでかいペンギンが地球にとつぜんもどったら、それこそ人間たちに何をされるかわからないよ。ワシが地球に帰るにはもう少し人間たちにかしこくなってもらわなくちゃね!」

っていったんだよ。

「ジャイアントペンギンさん!あなたのいうとおり、私たちは地球へ帰った方がよさそうです。今日はお目にかかれてとてもうれしかったです。それじゃあ、みんな地球へ帰るとしようか」

って王様が呼びかけた。

「ちょっとまって!」

ってフンボルトさんがいいだした。

「あたしはジャイアントペンギンさんのために地球から花束のおみやげをもってきたの」

って花束をわたしたんだ。でもその花、おいらどこかで見たような…。

「ああっ、それはおいらのお花畑のお花だ!」

っていうと、

「そうよ!あんたはここM−777星団に永住するっていってたじゃないの。だからもう地球のお花畑はいらないと思ったのよ!」

フンボルトさんがいったんだ。

「そりゃそうだけど、おいらに断りもなしに…」

「まあ、まあ、またお花畑を作り直せばいいじゃないか」

ってロイヤルペンギンさんがなぐさめてくれた。

「そうだ!おいらもいいおみやげをもってきてたんだ。はい、笑い袋!」

「アデリー君、地球からのおみやげで何でよりによって笑い袋なの?」

ってロイヤルペンギンさんがきくから、

「おいらはねぇ、どんなにつらいことがあっても、この笑い袋を一押しすればつられて笑っちゃうんだ。そうするとすごく元気が出るんだよ。ジャイアントペンギンさんはずっとこの星に一羽でいたからさみしかったろうと思ったんだ!」

ってジャイアントペンギンさんに笑い袋を手わたした。

「それはそれは、貴重なものを、どうもありがとう!」

 

 ってなわけでおいらたちはジャイアントペンギンさんをM−777星団に残して地球に帰ったんだ。

 

 おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。ジャイアントペンギンさんがはやく地球にもどってこられるように、キミたち人間ははやくお利口になってね!