『つぎ当てをしたペンギン』
おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。
この前、腹ばいで雪の上をスイスイすべっていると、どこからともなくメソメソ泣き声がきこえてきた。それは地球の泣き声だったんだ。
「地球さん、どうしたの?」
「アデリー君!きいておくれよ。ボクのオゾンそうに穴があいちゃったんだ!」
「”オゾンそう”ってなあに?」
「ボクが着ている服のことさ。人間たちのせいで大穴があいちゃったんだ」
「服に穴があいちゃったの!それはたいへんだ。つぎ当てをしなくてはいけないね」
「そうなんだ。オゾンでつぎ当てをしなくちゃいけないんだ。お願いだからアデリー君、キミがやってくれないか?」
おいらは何とかしてやりたいと思ったよ。だって、いつもお世話になっているからね。地球のおかげでおいしい空気をすったり、雪の上を気持ちよくすべったり、海の中にはいればおいしいお魚やイカ、小エビをいっぱい食べられるからね。けれども、
「どうやってつぎ当てをすればいいのかなあ?おいらにはわからないよ。そうだ!友だちのマカロニ君にきいてみるよ」
おいらはおしゃれなマカロニペンギンにきいてみた。するとマカロニ君は、
「まずはオゾンを手に入れないと…ねえ、アデリー君!王様に相談してみようよ」
というので、おいらはいっしょに王様ペンギンのところへいったんだ。
「アデリーよ。実は私もそのことをいつも気にしていたんだ!おまえがオゾンそうにつぎを当ててくれるのか?」
「はい!やりますとも…でも、つぎ当てをしてやりたいのですが、オゾンはどこでもらえるのですか?」
「フム、そういえばフンボルトがオゾンを作る機械をもっているという話をきいたことがあるぞ!」
「フンボルトさんってプニフル島に住んでいる、あのちょっと変わり者の…」
というわけで、おいらとマカロニ君はプニフル島にむかった。そこで手分けしてフンボルトペンギンをさがしたんだ。おいらが最初にフンボルトさんを見つけたんだよ。
「フンボルトさん!おいら君にお願いがあるんだ…君がもっているオゾンを作る機械をかしてほしいんだ!地球さんが困ってて…」
「あらイヤだ!どうしてあんたなんかにあの高価な機械をかさなくちゃならないのよ!」
って、ことわられちゃったんだ。 でもそのあと、マカロニ君がやってきた。フンボルトさんは、
「キャー!マカロニさんじゃないの!あたし、あなたの大ファンなの。だってそのサラサラした髪がとってもステキなんだもの!ねえ、この色紙にサインしてちょうだい!あっとそれから、あたしといっしょに記念写真を…アデリーさんシャッターをおして…」
マカロニ君は困り顔で、さっきのおいらと同じようにオゾンの機械をかしてくれるように頼んでみた。
「あこがれのマカロニさんの頼みならな〜んでもきいてあげちゃうわ。どうぞご自由にオゾンの機械をつかってくださいね!ほかに何か頼みごとはないの?」
だって。こういうのを”女心と秋の空”っていうのかな?けれどフンボルトさんがおいらにきいたんだ。
「この機械をかすのはいいけれど、どうやってこれで作ったオゾンをオゾンそうの穴のところまでもっていくつもりなの?オゾンそうって空の上にあるんでしょ?」
「おいらが考えるには、オゾンを大きな袋にいっぱいつめこんでコウテイペンギンさんの飛行船でもち上げれば…」
「オゾンそうの穴ってものすごく大きいのよ!どんなに大きい袋があっても足りやしないわ」
「じゃあ、飛行船でこの機械ごと持ち上げればいいんじゃない?オゾンの穴のところにこの機械をもっていって、そこでオゾンを作って穴につぎを当てれば…」
「あ〜あ、さすがはあたしのマカロニさん!そうよね。そのやりかたがあるわよね!」
フンボルトさんはマカロニ君の手じゃなくてフリッパーをつかんではなさないので、おいらがおも〜いオゾンを作る機械を1羽でしょって運んだんだ。おいらってなんだかそんな役回り…。そしてコウテイペンギンさんの飛行船をかりにいったんだ。コウテイペンギンさんはこころよく飛行船のエンペラー・ツェッペリン号をかしてくれたよ。エンペラー・ツェッペリン号にオゾンの機械をのせておいらがのりこんだ。けれど、飛行船がなかなか浮かび上がらない。オゾンの機械がおもすぎるんだ!
「あともうちょいで浮かびそうなのに。アデリー君よ!少しやせなさい」
なんてコウテイペンギンさんがいうんだ。
「そんなムチャな!」
っておいらは思わず叫んじゃったよ。そこでおいらは考えた。おいらのかわりにコガタペンギン君が飛行船にのってくれれば、エンペラー・ツェッペリン号は浮かび上がるんじゃないのかな。コガタペンギン君はおいらよりずっと小さいからね。でも、コガタペンギン君はすごくおくびょうなんだ。引き受けてくれるかどうか心配したよ。だから王様もさそってみんなで頼みにいくことにしたんだ。
コガタペンギン君が住んでるフィリップス島へみんなでいってみると、いつも腰の低いコガタペンギン君はますます頭を下げて、
「これはこれは、みなさんおそろいで…いや王様まで、この私めに何かご用でも…」
というと、王様が頼んだんだ。
「君に飛行船にのってもらって、オゾンそうにつぎを当ててもらいたいのだが、君じゃないとダメなのだ。やることはそんなにむずかしくはないし…」
「王様じきじきのお願いとあっては、ことわるわけにもいきますまい!」
ということでコガタペンギン君がオゾンを作る機械をのせたエンペラー・ツェッペリン号にのったんだ。今度はおいらの考えどおり飛行船はふわっと宙に浮いて、それからどんどん空高く昇っていったよ。雲のはるか上へね!コガタペンギン君によると、オゾンそうの穴はものすごく大きくて、はじめはどうなることかって思ったそうだよ。けれど、フンボルトさんの機械が大活躍して穴をつくろったんだって。コガタペンギン君がいうには、
「私めは、オゾンの機械がどんどんオゾンを作って穴をふさいでいくのを、ただただ飛行船にのりながら見ているだけでした…それから、オーロラを間近で見られてとってもきれいだったよ」
だってさ。コガタペンギン君ってのんきだな。それにしてもフンボルトさんの機械が大活躍したなんて、ちょっぴりフンボルトさんを見直しちゃったな。けど、フンボルトさんはずっとマカロニくんにべったり…マカロニ君がイヤがってるのにさ!
こうしてコガタペンギン君がコウテイペンギンさんの飛行船にのって、フンボルトさんのオゾンの機械でオゾンそうの穴につぎ当てをしたんだよ!大成功さ!そうしたら地球さんがニッコリして、
「ありがとう!!」
っておいらたちにいってくれたんだよ!王様をはじめ、おいらたちは喜びはしゃいだんだ!
おいらはアデリーペンギン。南極に住んでいる。おいらたちペンギンはみんなで力を合わせて地球の服・オゾンそうにつぎを当てたんだ。だからもう地球の服に穴をあけないでね!