と、Kちゃんは新しい運転手さんに訴えかけました。けれど…すでに新しい運転手さんの頭の中は真っ白でした。Kちゃんは高速道路なんてとてもムリでイヤだったけれど、昨日、みどりのワンボックスのお母さんがいった言葉を思い出しました。『新しい運転手さんの言いつけは絶対に守らなければなりませんよ!』と、いわれたことを…。しかたなく、Kちゃんは高速道路の入り口に入りました。

「ボクやるよ!だって一人前の男だもん!さっきは絆創膏をつけてくれたし…けど、一区間だけだよね!」

と、Kちゃんは念を押すかのように確認しました。新しい運転手さんのハンドルを握っている手がふるえているのがKちゃんにはわかりました。そして高速道路の加速路線に入ったみどりのKちゃんは658ccのエンジンをフル回転させました。幸いなことに高速道路はがら空きでKちゃん以外の車は走っていませんでした。はじめKちゃんは今まで自分が出したことのない猛スピードで走らなければならなかったので、なみだ目になってしまったけれど、パーキングエリアのわきを通過するころには、ほんのちょっぴりだけど気持ちよくなっていました。ようやく高速道路の出口で300円支払って“魔の高速”から抜け出すことができました。Kちゃんのハンドルは冷や汗でべたべたでした。今日はもう高速道路を走りたくはありません。高速道路から出たみどりのKちゃんと新しい運転手さんはそこから一般道を通ってゆっくりうちへ帰ることにしました。高速から出たのはいいけれど、今度は右も左もわかりません。道に迷ってしまいました。

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