ウィンザー城


実はウィンザー城見学は予定になかった。

たまたまレンタカーを借りる12月27日に何年か前の火事で公開されなかった部分がその後の修復の後、この日はじめて公開されることになったのだ。レンタカーを借りてそのままウィンザーへ直行。イギリスでの初めての車の運転にはちょうど良い距離だし、道も判り易そうだ。

山の上にある城。山といっても実際にみたら丘といったほうがいいくらい低いもの。高速道路からちょっと見えるがへたするとすぐに見失う。

それでも街中へ入る道さえとらえればあとは一直線で街中、そして駐車場も比較的わかりやすい。

ウィンザー城は中世的雰囲気のなかなかシックな城だ。ウィーンのシェーンブルン宮殿とはまた違う趣のものだ。至る所に監視カメラがある。

Queen Mary's doll houseも見学することに。

建物の外でしばらく待たされ、やっとdoll houseへ、なにやらミニチュアの城の内部の調度品が展示されている。暗くて説明書きがほとんど読めない。だがなかなか精巧なものだ。きっとこれでこの城の中の部屋のガイダンスをしているのだろう。

そのミニチュアの後に、人形のケースがあって、人形本体とさまざまな衣装がならんでいた。これがQueen Maryの御愛用の人形なのか、と思ったが、人形はこれだけ。すぐに別のコーナーへ。え、?すると1ポンドほど余計に入場料を取られたQueen Mary's doll houseとは何だったの? あとで知ったことだが、この展示のメインは人形ではなく、あの城の説明模型だと思ったミニチュアだったのだ。ワインのボトルまで精巧に作られた、世界一精密なミニチュアなのだそうだ。予備知識がないということはかくもものの見方を変えてしまうものだ。反省。

次の展示は、あの火事とその後の修復作業に関する展示。あの火事、といってもわれわれ日本人にはなんのことかピンと来ないが、何でも the Great Fire というのだそうだ。なんとも名誉な呼ばれ方をする火事なのだ。正直に並んで待っているとなかなか進まない。イギリスの人達は展示の説明を逐一熟読しているようだ。ここは申し訳ないがかいつまんで見ることにした。それでもわかったことは、石づくりの城がなんであんなに燃えるのか、ということ。実は内部の装飾はほとんどが木製、またはカーペットなどだ、よく燃えるのだ。修復には無視できないほどの国家予算が使われたという。それだけにこの日の一般公開もBBCも取材に来ていたし、ラジオのある番組でもthe Big Dayとも表現していた。ダイアナさんの葬儀以来の記念すべき日なのだろう。

実際の城の内部もたっぷり見ることができた。Waterlooの間に入ったときはおもわず「うぉー」と声がでてしまった。圧倒的な風格というか重みのある部屋。修復されたばかりのジョージ2世の間の入り口のカーペットには、通路の鎖の少し向こう側に足を伸ばした。このカーペットのこの部分はおそらく一般人では世界ではじめて足を入れたことになる。誰もうらやましがらないだろうが。

この城の内部はガイド同伴で入れないことになっている。各所にいる警備担当者に説明をうけることができるのだろうか。みんな黙々と見学している。各部屋にはその部屋の名前だけが掲示されている。

一通り見終って屋外に出たところで一人の衛兵が交代のためか、カツ、カツと歩いてこちらに向かってきた。冷やかし半分にずっとその顔を見つめいたが、一瞥もくれずに通りすぎた。さすがよく訓練されているものだ。

このウィンザー城はそれなりに見る価値があった。娘にも見せてやりたかった。結局元日の夜にもう一度娘を連れて訪れたのだった。しかし、もう公開時間は過ぎており、門の前だけで終わってしまった。城内の教会では17:15から晩祷が行われるらしく、一般客も参加できるそうだ。しかしクリスチャンでもないので残念ながら遠慮することにした。

また、王室の都合により公開時間が急に変更になることもあるらしいので注意が必要。運がいいと女王の入城などのパレードを見ることができるかもしれない。(絵葉書にはこの時の様子がのっていた)

中世の雰囲気をそのまま残し、現に使われている城の上を、世界一忙しいヒースロー空港の離発着のジェット機が絶え間なく通過する。イギリスという国の一端を垣間見て妙に納得させられるスポットであった。

(ウィンザー城とヒースロー空港は東西に走るM4というモーター・ウェイで結ばれている。ちょうど南北に走るM25というモーター・ウェイをはさんで対象の位置にある。)