これは日本ではロータリーといわれているものだ。右折するときもラウンダバウトに時計周りに、つまり左に向かって進入し、左折するように目的の道路にまがっていくというものだ。
幸いレンタカーを借りるまでは、Y氏運転の車の助手席でじっくりとラウンダバウトのケーススタディをすることができた。
しかし、一口にラウンダバウトといってもぴんからきりまである。
小さいものは交差点の真ん中に直径1メートルくらいの白い円があるものから。高速道路(モーター・ウェイ)の出入り口にある直径100メートルくらいはあるような、向こう側が見えないもの、それに、ラウンダバウトの中に信号があるものまで、さらに長さが200m以上もある長円形のものまで実にいろいろなラウンダバウトがあるのだ。
だが、慣れるとこのラウンダバウトのありがたさがよくわかる。まず、大抵のところでは信号無しで車の流れがよくなる。とにかくラウンダバウト内の車の進行を妨げない、つまりラウンダバウトに入るときは右から来る車が優先、という原則がきちんと徹底される。だから逆に右から来る車がなければノンストップで直進だろうが左折だろうが、右折だろうが交差点を横切ることができる。それに、この原則は四差路だろうが七差路だろうがみな同じだ。少ない原則で多くのケースに対応できる優れたシステムだ。
私にとって最高の恩恵と感じたのは、ラウンダバウトの中で好きなだけ廻っていてもいい、ということだ。ラウンダバウトの各出口にはかならず標識が出ているのだが、それを見落としたり、曲がりそこなうことがよくある。そのようなときには落ち着いてもう一回りすればいいのだ。さらに道を間違ったときもラウンダバウトを利用して堂々とUターンができる。まちがいの修復が単純な原則で可能であるシステムというのも(コンピュータにもいえることだが)優れているものと感じた。
しかし、このラウンダバウトにも欠点がありそうだ。右方優先はいいが交通量の多い道路からどんどん車が進入してくるような場合には、その左側の道路からはなかなかラウンダバウトに入れず、渋滞を起こしてしまう。それで信号付きのラウンダバウトも出てくることになったのだと思うが、ラウンダバウトの中に信号があると、ラウンダバウト自体が短いのでこれまたすぐにラウンダバウト内が車で飽和してしまう。
いずれにしろ地方の道路にもやみくもに信号をつけたがる日本の交通システムは根本から見直さなくてはならないという思いを新たにした。
ところで一瞬、あとになってヒヤッとしたことがある。ラウンダバウトによっては道路の見え方だけではそれがT字路なのかラウンダバウトなのかが判断しにくいものがある。しかもラウンダバウトで右折するときは(実際にはラウンダバウトに入るときには左折するのに)右へウインカーを出さなくてはならない。そんなことで、T字路と勘違いして、ラウンダバウトの入り口で本当に右折しそうになったことがあった。もし、そんなことをしたらいったいどんな状況になったのだろうか、想像しただけでもおそろしくなる。
ちなみにラウンダバウトの場合には<<<<<というマークが、T字路の場合には<<<<<>>>>>というマークが正面に見えるように設置されているケースが多い。