船着き場は、ごちゃごちゃ日本人だらけ。ところが良く見てみると半分は中国人だ。中国人たちはみな大きな声でしゃべっている。こんなところでは、日本人はシャイになるのだろうか。というより中国の人(実は香港から来た人達)は一族郎党いっしょに来ているのに対し、日本人は新婚カップルなどが多いので、こんな場所ではあまり目立たないのだろう。
さて、いよいよ乗船というときになり、クルーから注意があった。今日のクルーズは滅多にない悪条件(うねり)で、今まで船酔いしたことがない人もかならず酔い止めを事前に飲んでおけとのこと。おとなしく指示に従うことにした。
きれいな海を船はどんどん進む。うん、確かに揺れる。でも、こんな程度なら何てことないじゃないの?観光客相手で多少おどかしたのかな?
そのことをクルーに言ったら、『とんでもない、まだ内海だから全く揺れていないのだ、これから外海に出たらこんなもんじゃいないよ』だって。
左右に見えていた島が後ろへ遠ざかるころから、いよいよ揺れてきた。前の窓にドドーンとしぶきがかかる。それにもめげずこの船はぐんぐん進む。時々大きな波を越えると、船底からガガーンと大きな音がする。これって、飛行機の乱気流よりすごいじゃん。でも船にはシートベルトなんかついていない。こんなのあり?
ひとり、またひとりと酔い始めた。さっきまで大きな声で目立っていた中国人たちも別人のようにすっかり静かになった。最後は船内は野戦病院のような状況で、クルーたちはあっちでゲー、こっちでゲーの処置に当たっていた。あとで数えてみたら、約9割の乗客が船酔いを起こしていた。
私と、私に良く似ていつも女房から怒られている下の娘はぜんぜん酔わなかった。こんなところも遺伝するのか?
さて、地獄の航海を経てやっと着きましたよ、グレートバリアリーフへ(正確にはちがうのだろうけどこれでお許しを)。成り行きでやってきました私達。てっきり小さな楽園の島に上陸できるものと思っていたら、ここは海原の真っ只中。でっかい桟橋が浮いているだけ。ということは‥‥‥やっぱり揺れる。
さて、スノーケリングだ。ライフジャケットを着て、マスクとフィンをつけ桟橋から海へ。
ライフジャケットってこれしか浮かないの?息するのがちょっときついなあ、と思いつつまずは桟橋へ戻ってみた。あれ?このライフジャケット、子ども用じゃん?だれにも気付かれないように大人用に交換。さあ、今度は楽になるぞ。とそのとき、監視員のおっさんがにこにこして私に何か教えようとしている。え?表と裏が逆だって?
さあ、たっぷり楽しむぞ!
スノーケルの中に水が入ったら、プーッと行きを強く出して水を出しなさいと行きの船内で教わった。
お、さっそく水が入ってきたぞ。プーッ。そして口で息を吸う。う、また水が入った。プーッ。また口で息を吸う。今度はストローで吸ったように水が入ってきた。ブブーッ。このスノーケルって途中に穴が開いているんじゃないの?隣の娘は何事もないかのようにずっと顔を水中に入れているではないか。おかしい、何かがおかしい。思うように水中を見ることができないまま、時が過ぎてゆく。最後の10分で、原因がわかった。息を吸うときに『シーッ』という口の形をしていたのだ。唇を閉じないので歯の隙間から水が入ったというわけ。バカバカパパ。おお、恥ずかしい!唇をしっかり閉じていれば簡単だっのだ。世界中に同じバカをする人間が私以外に一人でもいるなら、恥を忍んでホームページに書く意味があるでしょ。
だんだん慣れてきて水中を見ることができるようになったが、魚があまりいないではないか。桟橋の付近がいちばんいる。思わず手を伸ばす。逃げると思ったが、魚は悠々と泳いでいる。それもそのはず、屈折の関係で実際よりもずっと近くに見えるのだ。人間が魚に触ろうと思って手を伸ばしても所詮魚までは届かないというわけだ。
魚以外に何か見えないか?下ではなく水面のほうを見ると、人間が見えるではないか。水中で間近に見る若いねぇちゃんのばたばた姿。こっちのほうが価値があったというわけ。(グレートバリアリーフの魚たちは、グラスボートやシドニーの水族館でしっかり見ることができたのであった。)
私もせっかくグレートバリアリーフに来たのに間抜けなことばかりしていたことになるが、ある中国人のおっさんも、スノーケルもフィンも着けず、ひたすら背泳ぎばかりしていたっけ。世界は広い。