更新日:09/04/19

ACT09とは

ACT09はDvorak配列での拡張ローマ字入力「ACT」をベースにした上位バージョンです。ACT09のコンセプトは以下のようなものです。

基本的考え方(ACTからの発展)

ACTでは、拗音を打つときに使用する[y]のはたらき、左手キーから始まるヤ行、パ行の打ち方などで、いわゆるローマ字の綴りとの関連性を意識していましたが、ACT09では、ローマ字綴りよりも、拡張の論理性や実際の打ちやすさを重視しています。子音キーが左手上段のp,yの場合、続くキーは、本来のキーの左右対称位置のキーを使うことを原則としました。

キーの組合せをキーボード図で示したキーマップはこちら

注意点

実装方法について

ACT09は、いわゆるローマ字定義のフルカスタマイズ前提としています。したがって従来推奨していた実装方法では実現できません。つまり、かな漢字変換ソフト(IME)では、唯一WXGだけがローマ字のカスタマイズが充分に行なえるだけで、ATOKやMS-IMEの類いでは実装できません。

しかし、2009年になり、あらたな希望が出てきました。

blechmusikさんが、通常のQWERTY配列の設定のWindowsパソコンで、Dvorak配列とそれをベースにした各種日本語入力法を実現するソフトウェア「DvorakJ」を公開されたのです。このソフトは、ATOKなどのIMEの処理の前に、QWERTYキーボードでの物理的な打鍵データを、仮想的なDvorak配列上のキー、さらにローマ字のつづりに直して、IMEに渡してくれる働きをしてくれます。したがって、一般的なキーボードドライバ、IMEどちらにも手を加えることなく、Dvorak配列ベースの日本語入力が実現するのです。

ローマ字の拡張定義をIMEの制約から解放される見通しがついたことを機会に、ACTの定義を見直すことにしました。その際、実際に毎日私が使っている打ち方も反映させることにしました。こうしてACT09の定義ができてきたわけです。

すなわち、ACT09の実装方法としては、DvorakJ.exeを使うことを暗に前提としています。

ユーザレベルについて

ACT09は、キーの組合せを指の動きで覚えることを前提とした打ち方ですので、タッチタイピングがある程度できる(あるいはこれからマスターする)ことが、快適入力の必要条件です。以下の解説で、とてもローマ字とは思えないような綴りが出てきますが、綴りではなく、指の動きが連想できないと習得は難しいでしょう。


ACT09 キーマップ

基本的な打ち方

通常のローマ字変換規則と異なる点

  1. 清音、濁音は「カ行」を除いて普通のローマ字と同じです。「カ行」の子音キーは[C]となります。例:か【CA】、き【CI】、く【CU】、け【CE】、こ【CO】
  2. 「ヤ行」「パ行」の子音キーY、Pは左手のキーです。この場合、後に続くキーは、本来のキーの左右対称位置のキーを使用します。 例:や【YS】、ゆ【YH】、よ【YN】、ぱ【PS】、ぴ【PD】‥‥
  3. 促音「っ」は、左手上段小指の[']キーです。通常のローマ字のように子音を2度打ちするのではありません。(Dvorak配列の実装によっては左手上段小指のキーが[*]となるものもあります。)
  4. 撥音「ん」はほとんどの場合後述の撥音拡張で入力できますが、単独の「ん」を入力するには【NN】と打ちます。
  5. 拗音は次節以降のようにACT独自の打ち方となります。通常のように[子音キー]+[Y]+[母音キー]では打てません(ここがACTとACT09の違い)。また、頻度の少ない特殊な拗音はサポートしていません。拗音文字(小さなゃゅょなど)を単独で入力するには[L]を前置します。
  6. 外来語に出てくる長音符「ー」は[-]キーを使います。Dvorak配列では[-]キーは右手小指拡張位置です。QWERTY配列よりもずっと打ちやすい位置です。


過去【CACO】、聞く【CICU】
国家【CO'CA】、結果【CE'CA】


拗音の打ち方(基本)

拗音は[子音キー]+[拗音化キー]+[母音キー]の3ストロークで入力します。

通常のローマ字綴りでは拗音化キーは[Y]キーでした。ACT09ではこのローマ字綴りを使いません。ACT09での拗音化キーは、子音キーと同じ段(同じ並び)の人差し指薬指のどちらか打ちやすい指(以下)、としています。

拗音化キーとして人差し指キー(G,H,M)を使うもの

キャ行、リャ行、チャ行、ニャ行、シャ行、ジャ行

'
キャ

リャ

チャ

ニャ

シャ

ジャ


許可【CGOCA】、乗車【ZMOUSHA】、社長【SHATHOU】

拗音化キーとして薬指キー(R,N,V,,)を使うもの

ギャ行、ヂャ行、ヒャ行、ビャ行、ミャ行、ピャ行

'
ピャ

ギャ

ヂャ

ヒャ

ビャ

ミャ


逆【GRACU】、病気【BVOUCI】、発表【HA'P<OU】
諸行無常【SHOGROUMUZMOU】

拗音には、二重母音がつくものや、2音目がク・ツとなるものが非常に多いのです。そのため、上記の単語も、もっと楽に打てる方法を使うと、以下のように打つことができます。
逆【GRL】、病気【BZCI】、発表【HA'P'】
諸行無常【SHOGLMUZZ】

拗音の打ち方(外来語)

ファ行、ヴァ行は、英語の綴りに準じて子音キーとしてそれぞれ、[F]、[V]を使います。拗音化キーは使わず2ストロークで打ちます。


ファイト【FAITO】、ヴォーカル【VO-CARU】

「ティ」や「ディ」は、[子音キー]+[その下の段キー]+[母音キー]で打ちます。綴りではなく、指の動きで覚えてください。


ティーパーティ【TWI-PA-TWI】、ディスク【DBISUCU】、テュートリアル【TWU-TORIARU】

「ウォ」はWの次に隣のMを使って拗音化します。


ウォーター【WMO-TA-】、ウォーク【WMO-CU】、ウォン【WMONN】、ウォッシュ【WMO'SHU】

さらに特殊な拗音に出てくる、拗音文字(小書きの「ぁぃぅぇぉゃゅょゎ」など)を単独で入力するには[L]を前置します。


ツィター【TULITA-】、クヮルテット【CULWARUTE'TO】


撥音拡張と二重母音拡張

2ストロークめあるいは3ストロークめの[母音キー]を打つ代わりに、[撥音拡張キー]あるいは[二重母音拡張キー]を打つことで、それぞれ「母音+ん」、あるいは「二重母音」を入力することができます。

ai
'
ou
ei
uu
ui
ann
onn
enn
unn
inn

[撥音拡張キー]は対応する母音の下のキーです。単独でも機能します。つまり、1ストロークめに打った場合でも有効(あ行+ん)です。


完全【C;ZJ】、凡人【BQZX】、ドンファン【DQF;】、安全【;ZJ】、温泉【QSJ】

[二重母音拡張キー]は対応する母音の上のキーです。単独では機能せず必ず2ストロークめ以降に使います。


高校生【C,C,S.】、同窓会【D,S,C'】、会場【C'ZM,】、放送【H,S,】、優秀【YPSHP】

注:「あ行」の二重母音は、綴りどおり打ちます。


愛情【AIZZ】、慶應【C.OU】、英雄【EIYG】


ヤ行、パ行の互換打ち

子音キーが左手である、や行、パ行は、本来のローマ字綴りで打とうとするとずいぶんと打ちにくく感じるものです。そこで、1打めが左手の場合は、2打めは本来のキーの左右対称位置キーを打つことにします。

' ui
uu
ei
ou
ai
i
u
e
o
a
inn
unn
enn
onn
ann

ヤ行


余裕【YNYG】、湯船【YHBUNE】、ヤングを読んだ【YZGUWOYVDA】

パ行


パピルス【PSPDRUSU】、コッペパン【CO'PTPZ】、ピンポン【PBPV】


拗音+二重母音の省略打ち

拗音では、「uu」「ou」という二重母音がつくケースが多いです。二重母音拡張キーを使うよりずっと楽に打てますし、頻度も高いので、通常は省略打ちを使います。

なお、外来語だけに出てくると思われる読みについては「う」の代わりに「ー」を割当てています。

右手

上段 中段 下段
中指
C
小指
L
P ぴゅう ぴょう
F ふゅー ふぉー
G ぎゅう ぎょう
C きゅう きょう
R りゅう りょう
  
中指
T
小指
S
H ひゅう ひょう
T ちゅう ちょう
N にゅう にょう
S しゅう しょう
中指
W
小指
Z
B びゅう びょう
M みゅー みょう
W ウォー
V ヴゅー ヴぉー
Z じゅう じょう


表情【AIZZ】、商業【SSGL】、入場【NTZZ】、フュージョン【FCZMQ】、ウォーニング【WZNXGU】

左手

1打めが左手の場合は、2打めは本来のキーの左右対称位置キーを打ちます。パ行の拗音が該当します。

小指
'
中指
.
P ぴょう ぴゅう


発表【HA'P'】、ぴゅう太【P.TA】


拗音+ク・ツの省略打ち

以下の、拗音のあとに「ク」や「ツ」がくる読みは3ストロークで打てる省略形を用意しています。

しゃく、しゅく、しょく、しゅつ、じゃく、じゅく、ちゃく、ちょく、きゃく、きょく、ぎゃく、ぎょく、ひゃく、みゃく、びゃく

たとえば、「しょく」であれば、2ストロークめまでは通常通り【SH】と打ちます。ところで「しょ」は「オ段」です。オ【O】は左手の薬指です。そこで3ストロークめに、【O】の代わりに右手の薬指のキー【N】を打てば「しょく」と入力されます。

拗音のあとにツが来るものは、Tのイメージから、3ストロークめに右手中指を使います。

その他よく出てくるものだけにこの省略打ちができるようにしています。

上段 中段 下段
 
薬指
R
小指
L
GR ぎょく ぎゃく
CG きょく きゃく
RG りょく りゃく
 
薬指
N
小指
S
中指
T
HN ひゃく
TH ちょく ちゃく
NH にょく にゃく
SH しょく しゃく しゅつ
薬指
V
小指
Z
中指
W
BV びょく びゃく
MV みょく みゃく
ZM じょく じゃく じゅつ


出場【SHTZZ】、極力【CGRRGR】、入出力【STSHTRGR】、逆上【GRLZZ】

この動きのイメージの延長で、「しゅく」は【SHH】、「じゅく」は【ZMM】で打てます。


縮尺【SHHSHS】、熟女【ZMMZMO】

ぴゃくは左右対称の原則から【P,'】と打ちます。実際に遭遇するのはほぼ「っぴゃく」というパターンに限られますので、【'p,'】という左手上段の4ストロークを続けて打つ感じになります。ピアノの音で言えば「ドファレド」ですね。


ヤ行頻出文字列の省略打ち

ヤ行は打ちにくい割に特定のパターンの文字列がよく出てきます。それらを以下のように楽に打つ省略打ちを用意しています。3ストロークでの省略打ちの場合は、拗音化キーを利用します。や行の拗音化キーは薬指の[,]です。


'
やす

やっぱり

より
よる
よれ
よろ
よら

やす
やすければ
やすく
やすい

やはり
やって
やっと
やった





よれば
やま




その他の頻出文字列の省略打ち(特殊拡張)

このページでは、ACT09の考え方と打ち方の基本について述べてきました。その他の頻出文字列の打ち方も含めたキーマップを用意していますのでそちらをご覧ください。キーマップでは、基本的な規則にもとづいた打ち方を赤色で、特殊拡張を青色で示しています。