お灸のイメージはどのようなものでしょうか。 お灸に関する歴史は実は鍼よりも古く、古代の人間はみな身体に灸をすえることで病 気に対応していたようです。 |
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1.お灸って何? |
お灸とは“艾(もぐさ)”にお線香で火をつけることをいいます。 |
2.艾(もぐさ)の作り方 |
艾の作り方ですが、実際に見てみると気の遠くなるような作業をして作っています。(図1) 蓬の葉っぱの裏についている繊毛のみが上質の艾として利用されている事実からして大変なことです。(図2) |
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(図1)
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(図2)
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艾には何種類もの製品の質があるのですが、最高級の物は蓬の葉っぱ全重量 のたった3パーセントしか製品になりません。270kgにして900gです。工場には米俵のように270kgの蓬の葉が積み上げられていましたが(図3)、この量 からたった900グラムしかできないと聞くと誰もが驚くのではないかと思います。 |
(図3)
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製造作業は手作業の部分が多く、職場の環境も細かな粉塵と強い臭いで息がしずらく、艾を作っている人に深く敬意を表したい気持ちになります。
その製造過程は、 1. 艾を乾燥させます。乾燥にムラができないように集荷した蓬の葉をほぐします。 270kgの束はすごい量です。(図4) 2. ほぐした蓬の葉を7kg位づつ籠に分けて乾燥室にいれ、 80℃から90℃の 熱で 4〜5時間乾燥させます。 (上質の艾は乾燥している最も寒い1〜2月に 作りますが それでも中は暑い(図5) 3. 乾燥した葉を取り出し、機械にかけて細かくします。(図6) 4. 長どおしにかけてほこりを落とします。(図7) |
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(図4)
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(図5)
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(図6)
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(図7)
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5. 少しづつ手で石臼にいれすりつぶしてさらに粉砕します。(図8) (石臼の重さは約300kg(図9)、昔は水車の力で回していたそうです。 いまはモーターを使用しています) ちなみに手で細かくひねるような艾(点灸用)を 作る時は、 石臼に3回入れて細か〜くします。おおざっぱに使用する艾(温灸用)は 石臼に2回しか入れません。 6. もう一度長どおしにかけてほこりをとります。(図10) |
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(図8)
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(図9)
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(図10)
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7. とうみにかけてさらにほこりを取り除きます。(図11) (竹でできたとうみは身長の2倍もある大きな物で、長い時間をかけ、 ゆっくりゆっくりほこりを取り除きます)(図12) 8. 最終的に人間の眼で混ざり物が無いか確認します。(図13) |
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(図11)
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(図12)
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(図13)
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以上がおおよその作業内容です。文字で読んだだけでは想像もつかないと
思いますが、 とにかく大変な細かい作業です。 |
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(図14)
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(図15)
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お灸は中国秦の時代に、湖北省から出土した木簡(竹に書いた文章)に記述があることから約2200年前には存在していた治療法と考えられます。日本には朝鮮半島を経て伝承したと考えられています。 |
もぐさに火をつけるのは何でもかまいませんが、現代の学校教育では線香を使用しているので、日本や中国をはじめ世界中の東洋医学者が違和感なく、行っている事と思います。 |
@ 原料であるタブの粉と粘り気を出す糊粉、かさを増すための粉、染料(通常はこれに香料)等を良く練り合わせる。 |
タブの粉 かさを増すための粉 染料(通常はこれに香料) |
混ぜ合わせている様子
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A 機械に原材料を入れ、巣金と呼ばれる穴からところてん状に押し出し、盆板と呼ばれる板に受ける。 |
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B 盆板からはみ出している線香の端を切りそろえる。同時に不揃いの部分を切りそろえる。(写真3) |
写真3 |
C 盆板を縦に重ねて乾燥させる。自然乾燥を1日、強制乾燥を2日置く。(昔は何日も自然乾燥させていたそうです。手間のかかる作業です。) |
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D 熟成させて包装し、出荷する。 |
熟成 梱包と出荷作業 |
以上が大まかな製造過程ですが、各工場の線香の違いは@の原料の作り方のあるようです。どこの店でも味が違うようにわずかな分量、温度の違いででき不出来があるようです。特別に原料を作るところを見せていただきましたが、まさに職人芸です。しかし、職場の環境はお世辞にもいいとはいえません。そのため、どこの工場も跡継ぎに困っているようです。殆ど手作業に近いお線香作り。お灸をすえるときもお線香を手にすると思わず手を合わせたくなる気持ちになります。 お線香1本にたくさんの人々の気持ちがこもっています。 |
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艾に火をつけた熱は500度以上です。だいたい、たばこの熱と同じように考えてもらっていいと思います。でも、こんな事を書くと、昨今「歩きたばこ」による子供の怪我が相次いでおりますのでさぞかし熱くて怖いイメージを持つかもしれませんね。「熱い」という感覚は温度が100度まで、つまりお湯に手をつけたり飲んだりした時の感覚です。100度を超えると痛みに替わります。ですから、お灸をしている事を知らされないでいると「痛い!」という言葉になります。まるで針を刺されたような感覚になるんです。 でも実際は皆さんが想像するような苦痛は殆どありません。当院でお灸の治療を受けた方は勿論お分かりの事と思います。 なぜだと思いますか? お灸をするときは、からだの調子が悪いときです。そんなときは皮膚感覚が悪くなっていますので、あまり熱さも、痛みも感じません。むしろお灸の治療は、熱や痛みを感じてもらうように据えるといってもいいでしょう。感覚があるということは皮膚が正常に働いている事を意味します。つまり身体の機能が正常に働いている=内臓の働きがよくなった・快方に向かいだしたという事に繋がるからです。 でも、身体の調子がいいときや必要のないツボにお灸をするとそりゃあ熱いですよ。なにせ500度ですからね。お灸についての知識がある方は、浅草のお灸や弘法様のお灸など頭のてっぺんに大きなお灸を据えて我慢している姿や大きなお灸のあと(灸痕)があるお爺ちゃんお婆ちゃんの背中を思い出す事と思います。当院にいらっしゃる方で、熱そ〜なイメージがあって怖いという殿方やお灸の跡が残るのでイヤという若い女性がいますが、そんな思いがあるのだろうと考えいつも以下のような説明をしています。 |
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「最近の研究で、身体は44度の熱で生体反応が起きる事がわかりました。アトピー性皮膚炎など皮膚疾患のある方は38度で身体に変化が起こります。昔のように熱さを我慢したりする必要はありません。お灸の跡を残さない程度の熱で効果を得られる事が解ったんですよ」と。 |
では、お灸と鍼はどうやって使い分けていると思いますか? お灸は血の流れを良くし、鍼は気の乱れを調整する医術として発生したと古来より考えられています。東洋医学の専門家は血と気の言葉の背景にある意味がわかりますからこの説明が一番簡潔なのですが、それ以外の方には良くわからないと思いますので、私なりの簡単な言葉での解釈を付け加えます。
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ヒトは体の調子が崩れてきたとき元に戻りたいという現象として「症状」が表れます。この時はまだ体力があります。鍼治療で大丈夫です。
身体を休めずに同じ生活を続けると体内で熱を作る力が衰え冷えを受けやすい状態になります。灸治療が必要です。 体力のある病気の人に対しては鍼治療単独で緩解しますが、体力を消耗し身体が冷えを感じている人や、長期間患っている病気の人は、灸治療が必要だという事です。体調が少しくずれた患者からガン患者まで鍼灸治療が幅広く適応なのはこんな理由からです。 |